門谷廣茂専務 |
前田浩史事務局長 |
近年の配合飼料価格の高騰によって、全国的に廃業する酪農家が増加傾向にあり、このままでは日本の酪農経営が立ち行かなくなると、中央酪農会議は9月10日、乳価の適正価格を訴えるための緊急会見を開いた。
東大の鈴木宣弘教授の調べでは、「大分県の50〜60頭規模酪農家の平均年間所得はわずか26万5000円。千葉県では96万〜205万円の赤字経営をしている酪農家もいる」らしい。鈴木教授は「日本はおかしい。生産コスト増が価格転嫁に直結しない。日本は乳製品の取り分が生産者とメーカーと小売でそれぞれ3:3:4程度の割合なので、生産者の取り分が10円上がると、小売が30円以上がることになるという。しかし、なぜ生産者の取り分をあげると、そのまま小売まで取り分を増やさなければならないのか。アメリカでは生産者が受け取る乳価が27円あがっても、店頭価格の上げ幅は同程度の25〜28円ほどで、小売やメーカーも同時に取り分が増えることはない」と日本的市場システムに疑問を唱え、「消費者側も、小売を通さず産地から直接共同購入するなどの働きかけをしてほしい」と、消費者側からの行動も必要だと訴えた。
中酪の前田浩史事務局長は、九州で無作為抽出した酪農家9件の平均収入が4年間で776万円から252万円へと7割以上減少したという調査結果を出し(グラフ参照)、「すでに飼料価格の高騰は酪農家の関与するところにはない。流通や消費者と一緒になって考えていく必要がある」と窮状を説明し、中酪の門谷廣茂専務の「牛乳生産に赤信号が出ている。酪農現場の生の声を一般国民に届けたい」という訴えとともに、1kgあたり10円の価格上昇が必要だと強調した。
生乳取引価格は、20年4月に30年ぶりに引き上げられて1kgあたり3円上がったが、その後も飼料価格は高騰し続け、生乳1kgあたりの生産コストが9円以上上昇しているため、3円の引き上げでは効果を期待できないのが現状だ。
◆「後継者が育っているのに廃業相次ぐ」生産者が窮状訴え
後継者代表 相馬義樹さん(栃木県那須塩原市)
「1億円かけて牛舎を増築したが、その費用すら支払えない状況になった。15haの畑で飼料などを作っているが、コスト削減対策もすでに手を尽くした感が強い。酪農とちぎでも廃業が相次ぎ、深夜のアルバイトでなんとか生活している仲間もいる。
牛乳は子牛が成長して妊娠し出産し、初めて生産できる。命を感じることができる食品だ。我々のような若い人間が未来に希望をもてる経営ができるように、ぜひみなさんのご理解をお願いしたい。」
婦人代表 大藪真裕美さん(熊本県合志市)
「私たちの農協には現在80軒ほど加盟しているが、毎月どこかが辞めている。しかも高齢化でやめているのではなく、40歳ぐらいの若い人たちが、もう限界だと辞めていく。若い後継者が育ってきているのに給料が払えず、エサが買えないから増産もできない状況だ。もう乳価をあげるしか方法がない。
女性が元気にならないと農業は楽にならない。女性が、農業が、日本が元気になれるような乳価にしてほしい。」