「1年で1000戸以上の仲間が酪農から去っていった。この危機を突破するには、乳価と小売価格の引き上げなしには不可能だ」と、全国酪農青年女性会議(酪青女)は9月11日、「今しか止められない!日本酪農の危機。」酪農危機突破緊急代表者集会を開き、すべての消費者、流通業者、乳業者への乳価引き上げを要請するアピール文を採択した。集会には関東を中心に100人以上の酪農家が集まった。
酪青女の黒澤寛寿委員長は「多くの酪農家は、日常生活の資金すら底についている。生産者がいなくなれば、安定した供給ができなくなる」と、価格引き上げの必要性を強調した。
会場に集まった酪農家からの訴えでは、埼玉の女性が「私たちの汗と努力がしっかりと形になるような乳価システムにしてほしい」と訴えたほか、北海道の女性は「もう今年は年を越せるかどうかわからない。乳価の引き上げは今すぐでなくてはダメなんだ」と、涙を流しながら訴えた。
酪農の危機を訴える黒澤寛寿酪青女委員長 | 「日本の酪農と牛乳を守るために!」 |
◆「前向きに検討する」も具体的回答はなし
乳価再値上げの要請交渉 (右3名が日本ミルクコミュニティ代表) |
集会で、自身も高知で酪農経営をしているJA全青協の竹村英久会長が、「牛乳を特売して集客しているような小売業界に対して、小売価格引き上げの要請行動をするというのは大変素晴らしいことだ」と賞賛した。集会終了後には代表者が2班に分かれて、量販店のイオンとイトーヨーカ堂、乳業メーカーの森永乳業と日本ミルクコミュニティの計4社にアピール文を手渡し、乳価と小売価格の引き上げ要請を行った。
イトーヨーカ堂ではデイリー食品部バイヤーの吉田隆至氏と約15分の交渉を行い、「牛乳の低価格販売はできるだけやっていかないようにしたい。牛乳を料理に使ってもらうとか、乳製品の販売を強化するなど、色々な形で販売を強化していく」という回答を得たが、小売価格引き上げについての話はなかった。
日本ミルクコミュニティでは内藤博常務取締役、藤本伸一酪農資材部酪農グループ部長、森一樹同副部長兼東日本酪農事務所長の3人と酪青女代表者10人が40分以上の会談をした。乳価の再値上げ要請については「牛乳の消費が減少しており、酪農家の厳しい経営状況については理解している」と発表し、「社長をはじめ重役のなかでも前向きに検討し、できるだけ早く実現したい」という回答を得た。ただし、時期や価格については未定だという。 要請活動を行った女性は「今日だけの活動に終わらせず、日々みんなで訴え続けていかなくてはいけない。会議や来客ではお茶ではなくて牛乳を出すとか、懇親会では牛乳で乾杯するとか、そういう地道な活動をしていくことが必要だ」と、活動の感想を述べた。