基調講演「海外の食糧事情と我が国の対応」(農水省食料安全保障課末松広行課長)の概要
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末松広行課長
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途上国の経済発展による農畜産物需要増、バイオ燃料の生産拡大、地球規模の気候変動などを背景に、2006年秋頃から小麦・大豆・トウモロコシの価格高騰が始まり、アフリカなどでは食料をめぐる抗議運動や暴動が頻発し、南米や中央アジアなどでは食料の輸出規制に踏み出す国が出てきた。 食料の輸出規制には2つの側面がある。1つは自国内の食料を確保するためだが、もう1つは自国経済の保護のためだ。食料供給力の高い発展途上国が食料を輸出をすると、世界的な食料価格高騰に国内の価格が連動してしまい、国内での公平な需給関係が崩れるおそれがあるからだ。 今後も世界の食料需給はひっ迫傾向を強めるだろうと見ており、日本が各国と食料を奪い合ったり、世界的な飢餓を助長したりするような状況を避けるためには、国内の食料供給力を高めることが不可欠となる。 会場からの質問では、福田前首相が自給率を50%まで高めるという目標を掲げ、農水省もそれに向けての工程表を作成するとしたが、その検討状況を問われて「いまだ検討中だが、水田や休耕地を活用して生産力を高めていく方針だ」という。07年度には米の消費量が微増したが、年々上がるということは考えにくく、楽観はできないと慎重な姿勢を示した。 また農畜産物の貿易や農政については、「適地適産で貿易の障害をなくして自由貿易にした方がいいとか、国が邪魔をしないで規制を撤廃した方が生産力が高まるといった意見を目にするが、例えば隣の韓国では全て自由にしたところ、小麦農家がほとんどいなくなって、自国の食料供給力が弱まった。やはり計画的な農業をしていかなければならない」と答えた。
自給率75%だった昭和40年と、自給率40%以下となった平成19年の一般的食卓の違い |
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