「食の信頼向上をめざす会」の唐木英明会長、食品の安全性についての著書がある |
「今は日本での食中毒死者や食品添加物による健康被害などほとんどなく、日本の食の安全性は非常に高いのに、なぜ消費者の間では不安が高まっているのか」と、食の安全の現状と対策や消費者の不安の原因はどこにあるのかなどについて、東大名誉教授の唐木英明氏が9月29日の「食の信頼向上をめざす会」(以下「めざす会」)設立総会で講演した。唐木氏は「めざす会」の会長を務める。
唐木会長は「一昔前の冷蔵庫もなかった時代は、食品の安全を守るのは主婦だったり食べる人の判断だったが、加工・輸入・外食の時代になってからは事業者がリスク管理するようになり個人が判断しなくなったため、不必要な不安を感じるようになった。新聞やテレビなどが、消費者を不安にさせるような報道をしているのも原因だ」と、社会情勢の変化や報道の影響で、本来の安全性やリスクが曲解されていると述べた。
「群馬県では食品の安全情報を、健康被害がない、腹痛程度はあるが深刻な被害はない、病気や死亡がありえる、と3クラスに分類して提供している。消費者にも分かりやすく、この取り組みが全国にも広がってほしい」と先進的な取り組みも紹介しながら、「事業者と消費者がおたがいに感情的にならず、理性的科学的に考えて健全な対立構造を作ることが重要だ」と、「めざす会」の目標を掲げた。
記念講演のほかにも、140人以上が集まった会場でのフリーディスカッションを行ない、次のような意見が出た。
「アメリカでは過激報道に対して損害賠償の訴訟をすることで、風評被害を事前に防ぐ。日本の企業は、マスコミに遠慮しすぎだ」
「世界の食料事情がさらにひっ迫すれば、ゼロリスクの追求やGMO反対などは言えない状況になる。消費者もリスクに対する考え方を変えて行く必要がある」
来場者の意見交換では、 行政や消費者などから様々な意見が出た |
「こういう場の議論には消費者団体代表ではなく、消費者代表を入れてほしい」
「めざす会」は食の安全に関心のある法人や個人なら誰でも入会できる。年会費は法人1万円、個人1000円。主にメディアとの情報交換や、会員の自由な意見交換の場を設ける活動をしていく予定だという。 (関連記事)