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JA北つくば 加倉井理事長
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伊藤常務 「農業の重要なファクターである女性の支援をするのはJAの役目だ」 |
JA全中の伊藤澄一常務はあいさつで「子育て支援については、地域で孤軍奮闘している人たちが多くいるが、各地域でコミュニケーションをとっていくことが必要だ。子どもをどうやって育てるかというのは国、地域、家族、そしてJAの大きなテーマ。農村と農業の持続的な発展のためにも、JAは地域と一体になって子育て支援の取り組みをすすめていきたい」と、次代を担う子育て環境整備の重要性を語った。 農水省経営局人材育成課女性・高齢者対策推進室の松井瑞枝課長補佐は、「農水省ではアグリウェルカム塾、農山漁村女性のための専門家養成講座、若手女性農業者の交流会などを開いて、女性支援をしている」と取り組みを紹介し、農村での女性の地位向上を訴えた。 (交流会については9月22日付の記事参照)
◆「農村部特有の悩みを解消するため、JAの取り組みに期待」 基調講演とJA北つくばの事例紹介
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片山研究員 「子と親がともに育つような支援が必要」 |
基調講演を行ったのは(独)農研機構農村工学研究所の片山千栄特別研究員。農業・農村の環境作りやライフワークバランスなどの研究成果や、フランスで農業社会共済組織(MSA)が独自に行っている子育て支援のレポートを交えて、日本の農村地域での子育て支援について発表した。 「フランスでは国や地方自治体の事業とは別に、MSAという組織が独自事業で、キャンピングカーを使った移動式託児所や、労働問題や家事サポートなども含めた総合的な相談窓口を開設し、農村部や農業者の子育てを支援している。日本では農村地域での子育て支援のために、農山漁村女性・生活活動支援協会が平成13年から「子育て支援相談員」を養成し、19年までに119人が研修を修了したが、活動できている人は2〜3割しかいない」と、日本では子育てや女性農業者への支援が不十分であると指摘しながら、「農業は労働時間が不特定だとか託児所が足りないなど、子育てについて農村部特有の悩みがあるので、JAが子育て支援に取り組むというのは期待ができる。最初からすべてをやる必要はないので、環境や人も含めた地域資源を有効利用し、できることから少しずつやっていけばいい。はじめの一歩を踏み出そう」と、JAの子育て支援の取り組みにエールを送った。
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外山センター長はJA北つくばの経済・生活(女性)部担当。専属保育士とともに親子と交流している |
JAの子育て支援事業の事例報告をしたのは、JA北つくばの外山綾子子育て支援センター長。 JA北つくばでは19年6月に子育て支援プロジェクトを創設し、数回の研究会を経て、20年4月10日に子育て支援センターを開所した。元支店だった建物を使い、子と親が一緒になってパンを作ったり、かまどでご飯を炊いたりするなど主に食農教育につながるような「企画あそび」と、テーマを設けずに自由に集まる「自由あそび」の時間を設け、毎回締め切り前には定員に達するほどの申し込みがある。9月までの5ヶ月間で計96組の親子が参加しているが、常に新規参加の親子がおり、地域全体に子育て支援の輪が広がっているという。 「今後も子育て支援センターを拠点にして、地域のニーズにあった活動を地域全体に広め、子育ての段階から食の認識を深めてもらう食農教育を心がけていきたい。地域に根ざしたJAの明るい未来のために、1つでも多くのJAが子育て支援に取り組んでくれることを期待している」と、JAの子育て支援の広がりに期待を寄せた。 ◆「子育てひろばは自由な場」明確な計画や束縛がないことで輪が広がっていく
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パネルディスカッションでは 子育て支援の意義や展開が話し合われた |
パネルディスカッションではJA北つくばの加倉井理事長のほか、JAいわて花巻営農生活部次長兼ふれあい課課長の晴山淳子氏が毎月第2、第4金曜日に開いている「わいわい子育てフリースペース」や、ちばコープ組織政策広報室子育て支援担当の加藤雅代氏が子育てひろばの取り組みを紹介しながら、子育て支援を始めたきっかけや意義について意見交換を行った。 加倉井理事長は「JAがなぜ子育て支援を始めたのか、と尋ねられるのが不思議で仕方ない。地域に貢献すること、子どもを産みやすく育てやすい環境を作り働く女性をサポートするのは組織の役目であり、組織活性化のためにも必要なことだ」と話し、晴山氏も「きっかけは北つくばと同じで、農村で女性が外に出て交流する場を作るという女性支援の目的でサロンを開いた」と、子育て支援を始めた経緯を説明した。 3つの取り組みの共通点は、「これが子育てひろばだという定義はなく、自由に集まることのできる交流の場を開設しただけ」(片山研究員)だ。晴山氏は「子育てひろばは束縛がなく、自由に入ってきて自由に帰る場。子どもを育てるだけでなく親育ちの場にもなった。最初は農村女性だけだったが、今では参加者の5割が非農家の女性となり、JAへの理解や食農教育を広げる場にもなっている」と話し、加藤氏も「子育て相談の場ではなく、単なる雑談の場。同じ悩みや不安を持った母親が集まって交流することで、自然と悩みが解消される。また子育てひろばを開設することで、保育士などの資格を持っているのに活用できていなかった人たちに、活動の場を提供することができたのが嬉しい」と、自由な交流の場だからこそ、色々な発展や広がりが期待できると語った。 JAでは12月5日に福岡市の西鉄グランドホテルで「西日本地区子育て支援シンポジウム」の開催を予定している。講演者や内容については現在調整中。
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