科学ライターの松永和紀さんを迎えてのシンポで、食品安全の最前線を討論した。
同機構は、食料・農業・農村に関する研究開発などを総合的に行う、わが国最大の組織。生産性の向上、低コスト生産、食の安全性、機能性食品、環境調和型農業、バイオマス燃料、温暖化適応型農業、さらに農業の多面的機能の向上を目指し、研究・技術開発を進めている。
本シンポは偽装表示、食品への農薬混入などの問題をテーマとしながら、食品安全研究の最前線にいる研究者を招き、主に「食の安全・安心を支えるのは誰なのか?」を討論した。食の安全・安心は、自分たちの五感で確かめ、判断するしかないのか。
農研機構は、(1)国産小麦の赤カビ病の防除(2)野菜・茶の安全・安心を支える技術(3)畜産物の安全を守るBSE研究(4)食中毒菌をすばやく見つける技術(5)トランス脂肪酸のリスクと日本人の摂取事情(6)食品の安全と消費者選好についてなど、もっともホットな情報を紹介した。
科学ライター・松永和紀さんの基調講演のテーマは、『食品報道のウソを見破る〜食卓の安全学』だった。氏は、「懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分で判断する」など、科学情報を識別する10か条を挙げながら、メディア・バイアス(注)のない冷静な報道の重要性を強調した。
(注)メディア・バイアス メディアが情報を伝えるとき、情報ソースのどの部分を取捨選択して伝えるかによって生ずる「ゆがみ」のこと。例えば、危険性の指摘はメディアの役割の一つだが、危険性を強調して報道することで、市民(消費者)は過剰な反応を起こす危険性がある。