(独)農業生物資源研究所は、同研究所が平成12年に作出した遺伝子組み換えカイコを使って、高機能を有する新しいシルク繊維の開発にとり組み、このほど緑、赤、オレンジなどの蛍光色を持つ絹糸、世界で最も細い絹糸や医療素材として利用可能性の高い絹糸の開発に成功したと、10月24日発表した。遺伝子組み換えカイコはマユが小さいなど実用的な形質が劣るため、農家で飼育されている実用品種との交配と個体選別を繰り返し、形質を改良した。
蛍光色はマユ、生糸、織物の状態で自然光下でも薄緑色やピンク色に発色しているのがはっきりとわかり、一定の波長の光を当てると緑や赤の色がいっそう際だって発光するという。
高い温度でマユを煮て絹糸を作る従来の方法では蛍光を持つ成分が壊されてしまうため、新たな繰糸方法を開発し、蛍光色を残したままマユから生糸を繰り取った。また、遺伝子組み換えカイコのマユから得た絹糸の衣料や医療素材としての特性を試験・評価するため、織物(ワンピース、ジャケット、ショールなどのニット)やインテリア用品(ランプシェードなど)、人工血管や角膜培養のフィルムなどを試作、その有用性を検討中という。
これらの成果は、東レ(株)、東京農工大学、群馬県蚕糸技術センター、群馬県繊維工業試験場、理化学研究所、Amalgaam(有)との共同研究によるもの。
試作品は、10月29〜30日東京国際フォーラムで開かれるアグリビジネス創出フェアで展示する予定。