農業用資材に使う生分解性プラスチック(生プラ)は強度を高めるとほとんど分解されないという難点があったが、農業環境技術研究所(農環研=つくば市)は分解を早めるカビを発見したと10月22日発表した。イネ科作物の葉に生息する糸状菌がそれで、特に大麦の葉に付いているカビの分解能力が強いとわかった。
これにもとづく環境保全と省力化の技術実用化が期待される。今まで植物に生息している微生物は見過ごされてきたが、そこに脚光を当て今後、資材として利用していく可能性を示した点でも画期的とされる。
農業用マルチフィルムは保温や雑草防除などに使われているが、ポリエチレン製は使用後の回収労力と、廃マルチの処理費用が大きいため近年は生プラ製品が導入されている。しかし生プラは分解性を高めると資材としての強度が落ち、逆に強度を高めると分解が困難という問題があった。
今度発見したカビは培養液の中に純度の高い生プラ分解酵素を分泌する。その酵素液を生プラマルチフィルムに散布すると、6日間で重量にして91.2%が分解された。
生プラは脂肪酸ポリエステル構造を持つものが多く使われているが、植物の体表面を覆う脂分にも同じ構造が含まれており、農環研はここに着目して強力な分解能力を持つ糸状菌を見い出した。また菌株特許も出願した。
この成果の1部は10月25日に開いた日本菌学会西日本支部大会で発表後、10月29、30日には東京で開くアグリビジネス創出フェア2008に出展する。