農水省は事故米問題を受けて省内に課長クラスを中心にした改革チームを設置したが、10月27日には外部有識者との意見交換を行った。
出席したのは作家で東京都副知事の猪瀬直樹氏と、JFEホールディングス(株)代表取締役社長の數土文夫氏(写真)。
地方分権推進委員も務める猪瀬氏は、事故米問題で三笠フーズの不正規転用を見抜けなかったとして対応の不備が指摘されている地方農政事務所について「(現場に)行って帰ってくるだけ。(仕事への)インセンティブがまったくないのではないか。起こるべくして起きた」と批判。地方分権の観点から、地方農政局や農政事務所を本省から切り離すなどの再編、改革が必要だと指摘。改革の視点は「分権化、市場化、民営化」だと強調し農業政策全体についても、「自給率向上といいながら減反し休耕田が増えている。株式会社でサラリーマンとして農業をやりたい、自由に作りたいという人がたくさんいるのにいつまでも実現しない。農業の民営化ができるような省になるべきだ」などと提言した。
數土氏は経済同友会が設置した農業改革委員会委員長を務めていると話し、経済界も農業については関心を持つと同時に「非常に強い焦燥感がある」とし、「グローバル化のなかでは(農業も含めた)国の総合力がベースになる。WTO、FTAは国益にとって喫緊の課題。しかし、FTAは非常に出遅れている。納得してもらえない勢力は農業界そのものではないかと国民、産業界は強く思っている」と指摘。また、食料生産の重要性が増すなど「マーケットが拡大していくことが分かっているにもかかわらず、戦略がオープンにされていないのは非常に不思議。予算の使い方など説明能力もないのではないか」と意見を述べた。そのほか、生産調整政策については「需要があるのに減反している。米価をキープすることがここちよい人たちがいるということではないか」などと指摘した。また、組織のあり方としては内部監査制度の有効性を提言した。
この日は石破農相も意見交換会に出席。これまでの農政について「消費者のほうにも生産者のほうにも向いていない。団体、業界を向いていた。大事なのはこの国の農林水産業が発展すること。そのために既得権益構造を壊していかないと」などと述べたほか、猪瀬氏が指摘した地方分権の視点からの組織改革については「省庁再編論とセットであるべき。本省の機能を地方農政局に落とすということも白紙から議論したい。地域に密着した地方機関のあり方を考えてみたい」と話した。
また、両氏から批判があった生産調整政策については「生産調整を全部やめれば米価が大幅に下がって大規模農家から倒れる」と理解を求め、生産を増大させるには米の輸出や飼料用米の活用など、「将来の絵を描くことが大事」などと話した。
農水省の改革チームはこのほか入省後数年の若手職員と意見交換する場なども設置して改革方向を検討している。