市川氏は、トレーサビリティについては、「ごはんの提供が主となるので、食味を出すためにブレンド米を購入している。購入先から農産物検査結果や農薬検査結果のデータをもらうが、産地を信用し、自社としての農薬などの確認はしていない」とした。また、原料原産地表示は、食味優先のため味度計、舌で確認して食味水準を維持、米への表示はしていないと話した。
齊藤氏は、国産米と外国産米では味が違うので、トレーサビリティ導入は「もっともと思う」としたうえで、国産米の19年産規格外米が米緊急対策で飼料用に回り、原料米が払底したようなことをなくし、欲しい原料米を購入できるのであれば、原料原産地表示に賛成するとした。また、流通規制は止むを得ないと話した。
佐藤氏は、協会として統一する段階には至っていないが、トレーサビリティでは、自社ではISOを1工場で既に取得、本社工場も近々取得するので、万全の体制になる。各社もそれぞれ準備していると話した。原料原産地表示については、国産もち米は平成18年のJAS法改正で都道府県名、市町村名の表示が義務づけられたことに触れたうえで、無菌米飯は殺菌処理工程がなく、トレーサビリティをやらないと大変なことになるので、うるち米についても国産米とはっきり表示して消費者に購入してもらいたいと話した。流通規制については、今回の事件はしっかり調べてもらうことで業界が引き締まる、と話した。
◆米加工品、外食産業にも原料原産地表示義務づけよ −米本氏
米本氏は、今回の事件で「生産者が国産米の安心、安全生産に取り組み、消費拡大をめざしていることに悪影響が出るのでは」「生産調整をしているなかでMA米が主食用に流通していたのは、国産米の需給に影響がでるのでは」など、生産者からJAに対し厳しい意見が寄せられたと紹介したうえで、意見を述べた。
トレーサビリティについては、今回の事故米不正流通は、流通段階でのトレーサビリティができない現行の流通の盲点を悪用したもの。流通段階のトレースが可能となるように、米穀を取り扱う全ての業者に対し、米の仕入れ・加工・販売などの記帳や行政への報告を義務づける必要があるとした。
原料原産地表示については、今回の不正事件は原産地表示の義務づけがなく、最終実需者や消費者が自ら国産米か外国産米かの選択をして購入することができないため、汚染された輸入米が国産米のように取り扱われ、米加工品にとどまらず、病院給食などの主食用米として販売されたことを指摘した。そのうえで、JAS法で義務づけられている家庭用精米に加え、現在義務づけられていない米加工品や外食産業での使用米穀も含めた全ての米商品に原産地表示の義務づけを拡大し、消費者が国産米か外国産米かの選択をして購入できるようにすべきと述べた。
また、流通規制については、トレーサビリティや原料原産地表示を確実に実行するため、米穀を取り扱う全ての業者を対象とする法規制と行政によるチェック体制の確立が必要と話した。
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米流通システム検討会は今月31日に4回目の検討会を開き、引き続き関係者の意見を聞くことにしている。