◆加工食品には「または表示」など柔軟な対応が必要
日本生協連の丹敬二カスタマーサービス推進部長は、コープ商品について次のように語った。
日本生協連が取り扱っている「コープ商品」は食品で約5000品目あり、そのうち原料原産地を限定した商品は約2000品目ある。原料原産地を重要なコンセプトにした商品(国産シリーズなど)については、現状でも原料原産地を明記している。
またその他の商品は、さまざまな原産地の原料を使用する必要があるため、原産地を特定することは困難であり、こうした商品に原料原産地表示をすることは、「表示内容と使用実態が乖離」し「優良誤認」を起こす恐れがあり実現困難だと指摘した。
そして東京都条例実施にあたっての検討(関連記事参照)で、「原料原産地を限定した商品」であっても、その商品に使われるすべての原料が限定されているわけではないので、このような商品に表示を行うことは「組合員に混乱を与えかねない」ので商品に表示することは難しい。
日本生協連では冷凍ギョーザ事件後、コープ商品についてホームページで情報公開をし、現状では職員2人を専任にして取引先から原産地変更のつど情報提供を依頼し、月1回更新している。東京都は商品に表示できない場合は、web上での公開を認めているが、それはロットごとの産地情報提供と規定されており、これに対応することは困難であると判断。電話による「組合員サービスセンターでの問い合わせ対応を基本に」することにした。
丹部長は最後に、「消費者にとって表示は一番身近な情報源」であるとしたうえで、「原料原産地情報は安全性の情報なのだろうか」と疑問を呈した。さらに「加工食品はさまざまな原料をブレンドして、品質のよいものを製造するのが本来の姿であり技術力ではないか」と指摘。そうした加工食品の原料実態を正直に表現するには、原料が複数国になる場合は「または表示」(例えばギョーザの場合、キャベツ:日本・中国のように「または」を意味する)など「柔軟な対応が必要」ではないかと述べた。
◆植物油の原料原産地表示は事実上不可能
(社)日本植物油協会の神林義則専務は、日本で使われている植物油の原料はほとんど輸入であること。輸入される原料には、油糧種子(大豆、菜種など)で輸入され国内で圧搾され粗油になるものと、粗油で輸入されるものがある。
植物油の場合、大豆や菜種という原材料による品質、味覚の差はあるが「生産国による差は生じ得ないし、安全性にも何らの差異は生じない」ことを強調。
例えば一般に家庭で使われるサラダ油原料は、米国産とブラジル産大豆とカナダ産とオーストラリア産菜種を混合して製品化されている。JAS法の原材料表示の原則は重量の多い順に記載することになっており、この順序を間違えると法違反で製品回収となるが、この4つの「順列組み合わせの数だけ表示が存在することになり、そのために準備をすることは事実上不可能だ」とした。
さらに油糧種子を圧搾して粗油を国内で生産するだけではなく、輸入粗油を使う場合もあるという。そのとき中国産粗油の原料は中国産大豆とは限らないとも。
また、ゴマ油の場合には、原料であるゴマの輸入先が多岐にわたり、過去10年間の延べ輸入国は48カ国にのぼり、年平均輸入国は25カ国となる。そして1社が平均的に用いるゴマの供給国は15〜7カ国(ブレンドして使う)でしかも毎年供給先が変わるため、これに対応して原料原産地を表示するための「組み合わせは無限大になり」実質表示は不可能だとした。
共同会議は引き続き関係者からのヒアリングを行うことにしており、次回は11月20日を予定している。