飼料や牧草価格の高騰で全国的に酪農経営が危機的状況にあるが、安全でおいしい牛乳を飲むためには、酪農家が安心して牛乳を生産できる環境を作り、適正な牛乳価格を保証するべきだと、生産者と消費者がともに危機に立ち向かおうという画期的な集会「日本の酪農が滅亡する!? 今、われわれに何ができるか?」が、11月4日に開かれた。 |
服部組合長 |
千葉北酪の服部一幸組合長が「本日、画期的なことが起こった」とあいさつしたが、生産者と消費者が連携して集会を開くのは非常にまれだ。
会場からのアピールで酪農家が「乳を搾れば搾るほど赤字で、家族に給料も払えない」と苦境を訴えたが、消費者側も「夫の給料が上がらない。1円でも安く買いたい」という苦しい状況にあり、生産コストの上昇分を容易に販売価格へ転嫁できないのが現状だ。しかし東都生協の庭野吉也理事長が述べたように、「消費者の暮らしが悪化するなか、生協は何をできるのかを真剣に考えなくてはいけない」という思いから、「モノの価格とは、いったいどういうものなのかを再度考える必要があると」と考え、今回の集会が実現した。
講演を行った東大の鈴木宣弘教授は、「日本の農業は過保護だと言われるが、それは大きな間違い。消費者の皆さんには農業をもっと理解してもらって、下支えをしてほしい」と呼びかけた。
◆生協組合員から酪農家へエール
菊谷理事 |
千葉北酪の菊谷義徳理事は「2年間で飼料代が880万円値上がり、収支は900万円のマイナスになった」というデータを基に現状を説明し、「安いものにはワケがある。八千代牛乳は他の牛乳より少しだけ高いが、その分いいものを作っているのでたくさん飲んでほしい」とアピール。他にも酪農家代表が「本当はデモとか集会とかやる暇があったら、牛乳をたくさん作って、おいしいと言われる努力をしたい」と、思うように牛乳を生産できない苦しみを訴えた。
生協の組合員は「高くても買います」「3人の子どもがよく飲むので、毎週10本でも足りない」「安さだけを追求しないで、安全でおいしいものを選ぶ」などの応援メッセージを送り、組合員が育てた飼料用米を酪農家へ贈呈した。東都生協では、バケツで作れる飼料用米セットを200円で販売し、畜産農家に提供するほか、農業生産者支援募金を募っている。また12月からは牛乳の仕入れ価格を5〜10円値上げるが、販売価格は据え置くなどの対策をとる予定だ。
集会では▽消費者は牛乳を飲む仲間を増やす▽酪農家は生産性と品質の向上に努める▽消費者と酪農家は国に対して酪農経営を安定させるさまざまな対策の充実を求める運動をつくっていく、というアピール文を満場一致で採択し、互いに手を取り合ってさらなる連携を誓い合った。
東都生協組合員が飼料用米を贈呈 | 東都生協の庭野理事長(左)と 北酪の服部組合長が協調を誓い合った |