農林水産政策研究所の河原昌一郎氏が「2001年から06年までの5年間で中国の食品工業総生産額は2.7倍になり、飛躍的に伸びた」「農家は手取り収入をあげるために、食品安全への取り組みに積極的だ」など、中国の食品産業と安全性やトレーサビリティの現状について、11月10日第2回食品安全セミナーで発表した。主催したのは、日本輸出入食品安全研究所(株)(平野展代社長、千葉市美浜区)だ。 同社は衛生管理や検査など、食品の輸出入事業を支援する活動をしている。上海名特産品国際物流・交易基地に「上海食品安全検査センター」を建設中で、09年12月までの稼動開始を目指している。今セミナーは、検査センターの紹介を兼ねて行われた。
◆「食品安全性の法・組織整備がすすむ」河原氏講演概要
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河原昌一郎氏 農林水産政策研究所 上席主任研究官
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中国の農林漁業生産額は01年から06年までで1.6倍ほどのびたが、加工や製造などの食品産業生産額は01年の9240億元(約13兆8600億円)が、06年には2兆4800億元(約37兆2000億円)へと2.7倍も成長した。理由は需要の増加だけでなく、むしろ外資企業の相次ぐ参入によって競争が激化したからだ。 食品産業が成長することで、食品の安全性も上向いている。都市住民の要求などで安全性が求められるようになり、食品の安全を高めると農家の収入も増えるからだ。また輸出するには各国の安全基準を満たすことが必要なので、輸出増加のために品質を向上させる必要もある。しかし輸出業者などの間では、「先進国の食品安全基準は厳しすぎる。中国をはじめ、発展途上国の食品輸出を差別する『緑色貿易障壁』がある」と、不満の声も出ている。 中国は政府主導で食品の輸出を重視しており、行政組織や法律の整備が急ピッチで進んでいる。06年には「国家食品薬品の安全についての第11次5か年計画」を発表し、食品の安全性検査体制の整備と強化に取り組んでいる。また08年4月には、企業から消費者への賠償責任などが盛り込まれた「食品安全法(草案)」を発表した。ただし中央での発令が省や県単位にすら正確に伝わらないこともあり、問題点も多い。 青島万福集団などの大規模食品メーカーは、トレーサビリティシステムを導入している。しかし、原材料の8割を仲介業者から購入している企業などもあり、疑わしい点が多い。政府は安全性向上に力を入れているが、企業や国民単位では、報道統制などを原因に、自主的な活動が乏しいのが現状だ。
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