農業者年金基金の加入者は20年11月時点で9万人の大台を超えた。
同基金は平成14年1月1日に旧制度の破綻をうけて、任意加入の積み立て方式に変わり7万7000人で再スタートした。毎年の新規加入者は1600人ほどだったが、ここ2年間は新規加入者が増えて19年度には4000人を超え、今年度も同程度でのびている。
新規加入者が増加していることについて伊藤健一理事長は「新制度へ移行したとき、支給額の9.8%引き下げや脱退者への返還金が8割だったことなどで、農業者年金への不信感が高まったが、5年が経過してようやく理解されてきたのではないか」と話した。
同基金ではさらなる加入者の増加を目指して11月12日、「農業者年金加入推進対策本部」を設置。加入推進活動を強化するのが狙いだ。「当面の目標は10万人だが、そんな数値ではなく加入対象となる全農業者の加入を目指したい」(同)と力をこめる。
対策本部は伊藤理事長を本部長、藤井理事、石島理事を副本部長にして全9人で構成。これまでは全国をブロック別にわけて、加入推進部長や女性農業委員へ研修会などを行ってきたが、今後は県単位でより細かい動向を分析して加入者を増やしていく方針だ。「加入窓口の設置や支払い業務など、実務レベルではJAに協力してもらっているが、さらに加入推進活動でも全面的に協力してもらいたい」(同)と、JAのバックアップに期待している。
◆節税対策や積立方式など、メリットの多い新制度
農業者年金は国民年金に上乗せする公的年金で、大きく6つの特徴がある。▽農業者が幅広く加入できる▽積み立て方式▽支払い保険料の全額が社会保険料控除対象▽保険料は自由選択▽終身年金、死亡時における80歳までの保証付き▽農業の担い手には最大1万円の国庫補助、などがそれだ。
加入の条件は、国民年金の第1号被保険者で、年間60日以上農業に従事するもので60歳未満。つまり兼業農家で厚生年金などに加入していなければ、男女や経営者、後継者などに関係なく誰でも加入できる。
現在の国民年金制度は、受給額が加入年数に従って決まる確定給付型年金だ。準備金を若い世代の納入に頼るので、少子高齢化が進むと将来の受給に不安が生じる。一方、農業者年金は自身の納入金と運用益による積み立て方式なので、少子高齢化が進んでも安心できる。またその運用は国債が中心で、株式の場合でも市場平均の値動きに連動して運用するオーソドックスな方式で、一定のリスクは有するものの、長期的には安定している。
納めた保険料の全額が、社会保険控除対象になるというのも大きい。月額2万円(年24万円)なら最大7万2000円、月額6万7000円(年80万4000円=最高額)なら最大24万1200円の節税効果がある。受給する場合も年間120万円までは非課税対象なので、税制面で優遇される。