農水省は11月14日、「水田・畑作経営所得安定対策」の評価に関する調査結果を公表した。
調査対象は19年産の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)を受けた400経営体と19年産と20年産の生産条件不利補正交付金(ゲタ対策)を受けた400経営体の合わせて800経営体。都道府県別・経営面積順で無作為抽出した。
米を含めた5品目を対象に標準的収入額の減少分の9割を補てんする、いわゆるナラシ対策についての評価は「評価する」、「どちからというと評価する」を合わせると70.5%と7割が評価すると回答した。
評価するとした282経営体でもっとも多かった回答は「18年産までは7〜10月の交付だったが19年産は農家収入のない5〜6月に補てんが行われ資金繰りが助かった」で138が回答。次いで「おおむね19年産の減収分をカバーできた」が101、「米の生産調整の非実施者と収入の明暗がはっきりした」が85あった(複数回答)。
一方、「評価しない」と回答した92経営体ではその理由でいちばん多かったのが「減少分をカバーできなかった」で55あった。そのほか「予想していたより、あるいは他産地にくらべて補てん額が少なかった」が31あった。
農水省経営政策課によると「ナラシ対策」について北海道の経営体に限ってみると「評価しない」が7割で全国集計とは逆転するという。
都府県では評価するとした経営体が多かったため全体の評価が上がったということだが、これは19年産では米価下落幅が都府県で大きく、とくに制度が想定していた前年比10%減を超えて下落した地域が多かったためでは、とする。この事態に対応して追加の補てんが行われたことから都府県ではナラシ対策の「メリット」が感じられたのではないかという。他方、北海道では米価の下落幅が小さかったことからナラシ対策のメリットがあまり感じられず、たとえば「米の生産調整非実施者との間で収入の差がつかなかった」との声もあるなどの評価につながったと農水省はみる。
一方、麦・大豆など4品目を対象に諸外国との生産コスト差を補てんするゲタ対策については、「評価する」と「どちらかというと評価する」を合わせて57.8%だった。
評価するとした231経営体がその理由としてあげたのは「豊凶に関わらず毎年一定額の収入が保証されるので経営計画が立てやすい」が191ともっとも多かった。次いで「固定支払いだけでなく(品質・収量に応じた)成績払いもあるので品質・収量の向上が促される」が91あった。
一方、評価しないとした150経営体ではその理由として「成績払いの割合が低いため必ずしも品質・収量の向上が促されるわけではない」が105ともっとも多かった。ゲタ対策についてもナラシ対策と同様、地域で評価が逆転し、北海道、福岡、佐賀、熊本では7割が「評価しない」だったという。
その理由は小麦やてん菜などで近年単収が向上していることが支払い基準単価に反映されなかったこと。「過去の生産実績」との間でミスマッチが生じ、豊作だったにも関わらず補てん額が同制度導入前より少なく「これでは生産意欲を削ぐ」いう批判が出ていた。今回の調査でもそうした声が出ている。
この点については昨年末の対策見直しで、単収向上が著しい先進的な産地に対して支払いを上乗せする先進的小麦生産等支援事業が決まっている。ただ、北海道と九州3県の158経営体のうち、この措置を評価したのは46経営体にとどまっていることが今回の調査では示された。経営政策課では「見直しは当たり前。そもそも地域の実情に応じて制度を仕組むのが当然という批判と受け止めている」としている。
ナラシ対策への加入者は5万211経営体(19年産)、ゲタ対策は3万5334経営体(19、20年産)。農水省は調査結果を対策加入者に説明するとともに、未加入者の加入促進を図る材料に活用していくという。