全国で3割以上の市区町村が、家畜排せつ物や間伐材などの処理に困り、バイオマス資源として利活用したいとしながら、7割近くが「財政の厳しさ」「コスト面や採算面での自信のなさ」などを主な理由に取り組んでいないというアンケート結果が、11月21日の第1回「バイオマスタウン加速化戦略委員会」で発表された。
同委員会は、バイオマスの普及とバイオマスタウン構想策定の強化をねらうもので、東大生産技術研究所の迫田章義教授を座長に、JA全農営農総合対策部の後藤厚バイオマス資源開発室長など全10人が参加した。
平成17年からはじまったバイオマスタウン構想は、20年11月現在で全国1832市区町村のうち、157市区町村が参加しているが、当初の目標である「22年度末までに300市区町村」の達成は難しい見込みだ。取り組む予定がない市区町村の多くは、財政難や採算性を課題にあげているが、事例報告をした栃木県茂木町農林課の矢野健司氏は「経済効果は十分ある」と話した。
◆地産地消、経費削減などメリット大きい
茂木町は茂木町酪農協会や認定農協者などから家畜排せつ物、もみがら、枯れ葉を搬入し堆肥化して、JAはが野などに委託販売する取り組みで、18年8月にバイオマスタウン構想を公表した。
「従来のゴミ処理費は年間1500万円かかったが、それがゼロになった上、堆肥売り上げ費800万円が入ってくるので、2300万円の経済効果がある。地元の堆肥で作った農産物を地元で消費することで地産地消になるし、CO2や悪臭が出ないので環境対策にもなる」(矢野氏)。今後の課題として、「リサイクルの住民意識がまだ薄いので、バイオマス資源を焼却ゴミと一緒にしてしまう人も多い。分別を徹底して堆肥化を推進し、里山をキレイにし、農地を復活させ、おいしい野菜を食べて元気になるという資源循環を広めたい」(同)という。
バイオマスタウン第1号の福岡県大木町は「生ゴミなどを有機肥料にしているが、近年の肥料価格の高騰で農家の関心が非常に高まった」(同町環境課、境公雄氏)と話し、「バイオガスプラントを町のど真ん中に作ることで、市民に参加意識をもってもらえるようになった」(同)と成功事例を紹介した。
他の市町村の取り組みやバイオマスについては、農水省のホームページ(http://www.maff.go.jp/j/biomass/)で。