米やその加工品の適正な流通を確保するための新たな仕組みを議論していた農水省の米流通システム検討会(座長:吉田俊幸・高崎経済大学学長)は11月27日、「中間とりまとめ」を行った。
中間とりまとめでは米の取引に関する記録・保存の仕組み(トレーサビリティ)と、原料米原産地情報を消費者に提供していく仕組みを「一体的に整備」する必要があるとした。
トレーサビリティの仕組みは、米が国民生活にとって重要な位置を占めているものの、用途・産地別に価格差が大きく、それを消費者が識別できないことから、流通の透明性を確保する必要があるとして、まずは米穀とその加工品について導入する。
具体的な品目では、もみ、玄米、精米、砕米といった米穀と、米粉、炒飯などに加工した米飯類、もち、だんごなどの加工品・調製品、そのほかせんべい、あられなど米を主原料にした食品や米粉パンなど原料が米であることを商品の訴求ポイントにしているものを対象範囲とする。対象品目は今後検討する。
一方、流通履歴を記録・保存すべき事業者は、対象品目を扱う業者となる。記録・保存する内容は、入荷・出荷時の品名、数量、年月日、相手側の氏名などと、そのほか入出荷の対応関係が明らかになるような必要な事項としている。
対象事業者には米の生産者も含まれるが、小規模、高齢化など生産現場の実態をふまえ販売委託が行われる場合はJAなど受託者が記録・保存などを行うことができることも認めた。
また、実際の制度設計にあたっては、事業者が現在行っている仕入れ・出荷の手法を大きく見直さなくても対応できるように留意することや、記録する媒体も紙だけでなくパソコンなど電子媒体も認めるなど、実行可能性と負担軽減に配慮することも盛り込まれた。ただし、適正に記録内容が保存されるため報告や検査、違反に対しては事業者名公表などのペナルティ措置を講じる。
一方、当初、原料米原産地表示を検討課題としていた表示問題については「情報伝達」との表現に変わった。米菓、外食、中食など関係業界からは原料米の産地が一定でないため、対象商品そのものへの原産地表示に難色が示されていたが、シールによる表示、メニュー、店内での掲示など弾力的な情報伝達の方法を可能とする考えを打ち出した。また、業者間取引での情報伝達は送り状での表示も可能にする。
この問題で「表示」ではなく、とりまとめ段階で「情報伝達」としたのは、牛肉のトレーサビリティ・システムが念頭に置かれたため。たとえば、外食店で提供される牛肉に産地表示はなくても、必要であれば耳標番号から産地などを確認できる「情報」は届けられているためだ。
原産地情報の伝達を義務づける品目と対象事業者はトレーサビリティの仕組みを導入する対象品目と同一となる。伝達する情報の内容は国産米であれば産地名、または国産との表記、輸入米の場合は原産国名を表記する。ブレンドの場合は重量の多い順に表記する。
流通規制については、過度な規制を行わない方向とし、米の出荷・販売業者の登録制導入は実施せず、現行の届出制を維持するとした。ただし、加工原材料用、飼料用など用途限定された米を主食用に使用・販売してはならないことなど、業者が守るべき事項を定めるとし、違反した場合のペナルティも講じるとした。
今後は具体的な対象品目の検討が焦点になる。米を原料とした酒も含めるかどうかも課題。検討会のもとに小委員会を設置して業界ごとに実行可能性を検討するなどの作業が想定されている。実際の制度実施では品目ごとに段階的に広めていくことも視野に入れる。
一方、農水省は新たな米流通システムの大枠が示されたことから、来年の次期通常国会に提出する法案化作業に入る。流通履歴の記録・保存と産地情報伝達を一体として義務づける新法を制定するか、現行食糧法の改正で可能かなどを検討するという。