農林水産技術会議は11月27日、農水省7階講堂で『「農業に有用な生物多様性の指標開発」−アジアモンスーン初の成果を目指して−』を開催した。現場レベルで利用可能な客観的評価手法の開発を目指したもので、将来的にはその成果を世界に発信していく。
農水省では、これまで取り組んできた環境保全型農業やIPM(総合的病害虫・雑草管理)など関連の施策をより効果的に推進するため、その効果を定量的に評価することとし、20年度からその指標となる生物種の選定と現場レベルでの評価手法の開発のための「研究プロジェクト」を開始している。
一方で、わが国では「田んぼの生き物調査」が各地で実施されるなど、農業分野においても生物多様性に対する関心が高まっているが、これまでの研究は事前に具体的な成果の利用方法が十分議論されていなかったことから、対象が拡大・拡散し基礎的な知見の蓄積にとどまっていた。
結果は、農法・農業技術の違いで生物種とその個体数がどの程度変化するかなど不明な部分が多く、現在まで指標の開発までには至っていない。
今回の「研究プロジェクト」では、土着天敵など農業に有用な生物を中心に、平成21年度までの2年間で指標の候補となる生物種を選定し、農法・農業技術における生物多様性の保全効果を明らかにしていく。
選定にあたっては、(I)客観的データにもとづいて評価が可能、(II)農業生産性を損なうことがない生物種、の2つの条件を挙げた。
さらに、その後3年間で「指標の候補」について、栽培される作物や環境条件などが異なる地区ごとに、現場レベルで利用可能な客観的評価手法を開発していくという。
これら成果は、将来的にアジアモンスーン地帯では初めてとなる農業に有用な生物多様性評価手法として、世界に発信していきたい意向だ。