●中国製冷凍ギョウザで有機リン中毒
昨年12月から今年1月にかけて中国産冷凍ギョウザが原因の有機リン中毒が発覚。千葉県と兵庫県の3家族10名が混入していた有機リン系農薬メタミドホスによる被害にあったことが確認された。問題の冷凍ギョウザは中国天洋食品工場で製造されたものでJTフーズなどが輸入。コープ商品にもなっていた。日本側は捜査で中国内での混入の可能性としたが原因は不明。7月には中国でも同様の事件が起きていたことが明らかになった。
●原油・肥料・飼料価格が高騰
新興国の経済発展、人口増大や投機マネーの流入などが要因となって原油、トウモロコシなどに飼料原料の高騰に加え肥料価格も高騰。生産現場には大きな打撃となった。JAグループは8月に「未曾有の危機」だとして打開策の確立を求める緊急集会を開いた。8月末の政府の緊急経済対策に生産資材高騰対策が盛り込まれた。
●全政策価格を異例の期中改定−畜産・酪農
飼料価格高騰で経営が厳しさを増した畜産・酪農。昨年から消費者への理解醸成活動に取り組み、今年も消費者との意見交換会や、6月1日を「牛乳の日」として初のキャンペーン活動にも取り組んだ。一方、毎年3月に決定される畜産酪農政策は飼料高騰を受け2月に続き6月にも加工原料乳補給金単価など全政策価格の引き上げが行われた。販売面では生乳価格は4月からキロ3円引き上げを実現。来年3月から同10円の再引き上げも決定した。
●野菜の価格が低迷−消費拡大が課題
生産コストが上昇する一方で今年は野菜も消費減と卸売価格の低迷に苦しんだ。キャベツは出荷量は平年並みにも関わらず卸価格は2割も安いことなどが報道された。産地も消費拡大に取り組み、たとえば、8月には群馬県のJA嬬恋村が東京都内でキャベツ配布キャンペーンを行い、「おいしいキャベツをたくさん食べて」と訴えるなど野菜でも取り組みを強化した。
●JAグループ全国機関が新体制
7月末から8月にかけてJAグループ全国機関が改選期を迎え新役員体制となった。
JA全中は新会長に茂木守氏が就任(8月8日)。「自由化圧力に対抗するには地産地消が最大の武器」などと抱負。JA全農の新会長には永田正利氏(7月24日)、JA共済連の新会長には安田舜一郎氏(7月25日)が就任した。
●食料危機で食糧サミット開催
世界的な食料価格高騰を受けて6月3日からローマのFAO(国連食料農業機関)で「食糧サミット」が開催された。福田前首相が出席し「世界最大の食料純輸入国であるわが国としても食料自給率の向上を通じて世界の食料需給の安定化に貢献する」と演説。サミットでは「食料生産を強化するとともに農業への投資を拡大し地球上に与えられた資源を持続的に利用するために必要なあらゆる手段を講じることを決意する」と宣言した。
7月に洞爺湖で開催されたG8サミットでも「世界の食料安全保障に関するG8首脳声明」が出された。
●緊迫するWTO交渉−「決裂」と「先送り」
WTO交渉は今年2月に議長案改定版が提示され、その後5月と7月に改定版が示され、7月末にはジュネーブで閣僚会合が行われた。提示された議長案は日本にとっての焦点となっている「重要品目」数が「4〜6%」とされるなど厳しい内容。日本は8%確保が主張だ。閣僚会合は米国とインド・中国の対立で決裂。その後、金融危機と世界不況を背景に年内合意に向けた動きが加速。12月初めには議長案第4次改訂版が示されたが、重要品目数は原則4%とわが国にとって厳しい内容。年内の閣僚会合は先送りされたが緊迫した状況にあることは変わらない。政府の交渉姿勢が問われている。
●食料危機はWTO合意で解決されない−世界の農業者団体が宣言
7月に開催されたWTO閣僚会合には世界農業者団体が集まり「食料危機はWTO合意で解決されるものではない」との共同宣言を採択。世界40か国、19の農業者団体が参加した。高まる食料需要を満たすには世界の農業者が収益を上げ持続可能な方法で生産力を増強させるべきだとし、過度な自由化に反対。「悪い合意ならしないほうがいい」と訴えた。日本からはJA全中と全国農業会議所が参加。
●事故米問題でMA米への不信−農水省改革へ
9月、残留農薬基準を超えたりカビ毒などが発生し工業用途として利用されるはずの「事故米」を大阪に本社のある三笠フーズが主食に不正転売していたことが発覚した。その後、不正転売された事故米はMA米がほとんど。その後調査で不正転売した業者も複数あることが判明。転売と複雑な流通でが繰り返された結果、善意の業者も含めると関連業者は400社近くになった。初期対応のまずさから批判が高まり、太田前大臣と白須前次官が同時に辞任という異例の事態に。その後も農水省の責任が追及され、食の安全・安心意識に欠けていたとの批判を受け農水省改革に。
一方、MA米の不合理性が改めて注目されるとともに、消費者に不信感も高まったことから米の流通システムも見直しを行われ、米加工品の原産地情報提供や、流通履歴記録の義務づけなどの方向が固まった。
●20年産米、作況は「102」−計画生産は来年も課題
20年産米の全国作況は102。一方、小麦製品などの価格上昇で米の消費が伸び当初の需要見込みから20万トン程度上乗せされ855万トンに。生産量との差約11万トンを政府が買い入れ需給調整を図ることになった。