日本生協連(山下俊史会長)は1月9日に、農水省が募集していた「食料・農業・農村基本計画」の見直しに関する意見書を提出したと、15日に開催された全国政策討論集会で公表した。
この意見書は、1.食料自給率の具体的な目標設定、2.「自給力」強化のための「農地の確保」「担い手の育成」「技術開発」の推進、3.農業経営支援策は「関税と財政投入との施策のバランス」について国民的合意が必要、4.環境重視型農業の推進、5.食に関わる情報の国民的理解促進、6.食品の安全に関わるリスク分析手法の充実強化など9項目にわたる。
山下会長は05年に消費者視点にたってもとめられた「日本農業に関する提言」に新しい状況認識を加味したもので、さらに踏み込んで検討するために日本生協連に農業問題を検討する委員会を設置するとした。
この意見書では、例えば自給力強化のために必要な「農地の確保」では「農地の活用を促進する視点で、農業者以外の法人・企業が、賃借しやすい=農業参入しやすい環境整備」を求めている。また「担い手育成」では「農業者以外の法人・企業も農業参入しやすくし、多様化することが効果的」だとしている。
農業経営支援策は「関税と財政投入との施策のバランス」についての項目では、支援施策には「関税のように価格にオンされて消費者が負担しているものと、財政投入により納税者が負担しているもの」があるが、「両施策の違いが、国民・消費者には理解されていない」「関税は商品価格に間接的にオンしているということもほとんど実感されていない」「関税の平均値や、一部の品目で極めて高い税率のものがあるなどの実態もあまり知られていない」など、05年提言と同様の見解を示し「どちらの負担施策を実施するにせよ、これらの中身の理解促進を図ることが、まず必要と考えます。 その上で、両施策のバランスのあり方について、国民的論議と合意形成が図られるべきである」としている。
05年の「提言」が出されたときに本紙ではその問題点を指摘してきた。あれから4年経ち、この間、最近の自給率・自給力についての論議をはじめ日本の食料そして農業のあり方についてさまざまな議論がされ、地域生協と各地のJAの間では産直をはじめとする具体的な取り組みが積み重ねられてきたと本紙では認識している。
しかし、残念ながらこの「意見書」にはそうした現場での具体的な取り組みから見出されたはずの方向を読み取ることはできない。今後設置されるという検討委員会では、より生活者と生産者に密着した議論がされることを期待したい。