農林水産省は新たに開発した「世界食料需給モデル」による2018年の世界の食料需給見通しを1月16日公表した。
予測結果では、2018年までに世界の穀物消費量は06年より5億トン増加し26億トンに達する見通し。94-06年では3億トンの増加だったが、今後の12年間では、人口増と所得水準の向上でこれまでよりも消費量が伸びる見込みだ。食用の消費量は94-06年で18%増、06-18年でも19%増とほぼ同じ増加率だが、飼料用の穀物消費量は肉類の消費増加で94-06年の17%増に対して、今後は34%増と高い伸び率に転じる。
小麦と米はおもに食用需要が伸びる。とうもろこしや大麦、ライ麦など粗粒穀物は、飼料用やバイオ燃料原料としての需要が伸び、大豆では搾油用需要が伸びる。各品目とも消費量は増加する見通しだが、消費の伸びに生産が追いつかず期末在庫量は低下する見通しだ。
この予測モデルは、各国の政策変更や今後の気象変動などを考慮していないベースライン予測(自然体予測)。人口は国連予測に基づき18年の世界人口は76億人、1人あたりのGDPも増加傾向で推移し06年より2100ドル増えて9300ドルになるという前提。生産量についても、現状の単収の伸びが維持され作付け面積の拡大に特別な制約はないとの前提で予測値を出している。
その結果、2018年の穀物生産量は25億7400万トンなるが、期末在庫率は06年の17%から13%までに低下する見込みだ。
◆価格は再び上昇傾向に
地域別の需給見通しでは、各地域で生産量は増加するが、アジア、アフリカ、中東では消費量の伸びに追いつかない見通し。そのためこの地域では純輸入量が拡大する。一方、欧州、南米、オセアニアでは純輸出量が拡大し、地球上の「食の偏在化傾向は引き続き拡大」する見通しが示された。また、北米は純輸出量が引き続き減少するが、ブラジルなど中南米は純輸入地域から純輸出地域へと転換することがこの予測で示された。
世界全体で期末在庫率が低下するなど需給はひっ迫傾向となるため、現在は一旦収まっている穀物価格も06年以前に比べて高い水準で上昇傾向を示し、名目価格(今後の物価上昇影響を見込む場合)で34〜46%、実質価格(物価上昇影響を除外する場合)で7〜17%上昇する見込みだ。
たとえば、06年(基準年)の米の国際相場はトン374ドル、それが18年には実質価格で402ドル、名目価格で同502ドルまで上昇していくという予測結果となった。小麦は06年同202ドルが218ドル〜272ドル、とうもろこしは同133ドルが155ドル〜193ドルなどと推移する。
肉類の消費量も各品目とも増加する見通し。肉類全体では、北米地域が06年比で97%と減少するがアジアでは124%、中東では113%、アフリカ117%とと世界全体で111%となり、価格も18年時点で実質で5〜13%、名目で31〜41%上昇する見込みとなった。
また、乳製品も需要増で国際価格は上昇基調を示す。バターは06年228ドル(100kg)が18年には413ドル(名目)と81%、脱脂粉乳も同292ドルが同511ドルと75%も上昇するという試算となっている。
世界の食料需給見通しには米国農務省やOECD(経済開発協力機構)、FAO(国連食糧農業機関)などがあるが、農水省は食料輸入国の立場からアジア諸国等については独自のデータを入手して試算、世界を8地域に分けて分析した。
米国農務省の見通しでは2017年にバイオエタノール需要が140億ガロンに拡大するなかでも、原料とうもろこしの搾り粕であるDDGSが飼料に利用されるため、とうもろこしの飼料需要はあまり伸びず、純輸入量は約2割増加するとし安定的な供給はできるとしている。しかし、農水省の今回の試算ではDDGSが米国内で実際に飼料用には利用されていないことから、DDGS利用を前提にせずに分析、その結果、米国農務省の予測とは異なり、北米からのとうもろこし輸出需要は世界の飼料用需要の増加で約3割減少するとの予測となった。
今回の予測には昨今の経済危機や、今後の農業政策等の変更、気象変動などの要素は前提にしていない。農水省は今後、毎年このベースライン予測を更新していくほか、さまざまな要素を織り込んだシナリオ分析も行っていく方針だ。