農政・農協ニュース

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担い手の期待に応える金融対応を

第4回JAバンク担い手金融リーダー全国大会(1/20〜21)

 「農林中央金庫は1月20、21日に東京都内で第4回JAバンク担い手金融リーダー全国大会を開いた。JAの担い手金融担当者らが集まり日頃の取り組みのなかで抱えている課題などを話し合い担い手対応に関する知識やスキルを向上をめざすのが狙い。1日目には法人経営者による講演や事例報告が行われた。

◆営農経済部門と連携して

上野理事長

農林中央金庫 上野博史理事長

    上野博史理事長は厳しい農業情勢のなかでも、消費者と連携した自立した経営が育ち、異業種の農業参入、雇用の悪化から農業への就労への関心も高まるなどの新たな動きも出てきているとし「経営が大規模化、高度化した担い手の期待に応えられる金融対応が求められている」と強調し、営農部門などと連携し「ニーズを的確に把握し、さらに踏み込んだ取り組みを」と話した。また、農林中央金庫としても、JAグループから農業資金対応を強めるべきとの要請があることから、「最重要課題と認識し県域やJAに対するサポート体制を構築していく」と述べた。
    来賓の農林水産省金融調整課の青山豊久課長は「担い手に真に必要とされ感謝される担い手金融を」と期待を寄

青山課長

農林水産省金融調整課
青山豊久課長

前嶋常務

JA全中
前嶋恒夫常務

せた。また、JA全中の前 嶋恒夫常務は農業法人へのアンケート調査でJAの「資金対応」への期待が4割近くを占めて トップとなっていることを紹介し「営農・経済部門と連携した資金ニーズ対応が一層重要になっている」と指摘するとともに、全中が取り組みを進めている農業経営管理支援システムが動き出せば担い手の経営状況を把握し、融資判断などにも活用できるとした。現場では地銀の参入などの変化が起きているなか「JAへの信頼を高め地域農業を守ることが期待されている」と話した。

◆支店横断的な金融リーダー

津波農業金融部長

JAおきなわ
津波勇徹農業金融部長

    大会ではJAおきなわの津波勇徹農業金融部長が事例報告した。
    同JAは昨年4月に農業経営アドバイザーを担い手金融リーダーとして位置づけ10名体制をとった。本店に専門部署を設置したほか地区の担当者を配置し、支店横断的に機動的な融資相談対応を行うことをめざした。
組合員の要望に応え、JAで利用できる農業関連資金の一覧化をはかろうと分かりやすい「農業関連資金商品概要」を作成した。支店や営農センターの窓口に置き相談対応や、生産部会の集会などでも説明資料として活用している。
    審査期間が短く利用しやすい設備資金や、大規模経営や法人向けの運転資金など農業金融商品も創設した。
    また、全中の農業経営管理支援の取り組み県に指定され、農業簿記記帳サービス体制を構築中で、今後は経営分析など農家経営改善支援も進める。経営全般の状況把握ができることから「貸出業務にとっても重要。今後も連携して取り組む」という。
    TAC(担い手渉外担当者)の定例会議には農業金融部が必ず参加。TACの活動報告から金融をキーワードとする情報を抽出し、金融リーダーや支店の融資担当者に情報提供するほか、TACからもたらされた具体的な金融相談案件に対しては、TAC、金融リーダー、支店担当者が「一堂に介して農家に出向く」などの初期対応を重視。審査の迅速化につなげる。「農家にとっても何度もJAに足を運ぶ無駄が省けている」と報告した。
    「緒についたばかりのものが多いが、今後の農家経済の向上にために農家とともに知恵を絞っていきたい」と話した。

◆営農指導員資格を取得

杉谷融資課長

JA大井川
杉谷道也金融部融資課長

    JA大井川からは金融部の杉谷道也融資課長が事例報告した。
    同JAでは18年度に「担い手農業者」を認定農業者と農業法人と定義し、担い手金融リーダー12名と農業者相談員12名を事業所に配置し、最前線で支援活動を行う体制とした。
    翌年にはホームページに農業資金情報の掲載と相談機能を付加したり、金融リーダーの活動基準を制定するなどの取り組みを進めた。また、活動を活性化させるため担い手農業者のJAとの取引実態調査を行ったところ、信用部門、共済部門なども含めJAにとって重要な取引先であることが分かり活動の大切さを再認識にしたという。
    こうした意識改革のもと、金融担当者も営農知識が必要との考えが生まれ、「担い手金融リーダーが営農指導員資格を取得した」。
    また、利便性を高めるために携帯サイト「J-mo」を開設、農業資金、アグリサポート事業、指導情報、販売情報などを掲載して生産意欲の向上につなげるとともに、消費者向けの地域農産物情報の提供としても活用しているという。「地産地消も担い手支援のひとつ」としている。また、携帯サイトは担当職員による情報の共有化にも役立っている。
    そのほか、役員参加による担い手訪問活動の実施や、農業資金総合ガイドブックの作成、配布なども行っている。
    金融機関の競争が激化するなか「営農部門と連携したJAらしさの発揮が金融部門での生き残り策」と報告した。。

◆担当者はもっと動け!

牧秀宣代表取締役

(有)ジェイ・ウイングファーム
牧秀宣代表取締役

    基調講演をしたのは愛媛県の農業法人(有)ジェイ・ウイングファームの牧秀宣代表取締役。水稲、麦、雑穀、野菜の生産と加工販売が経営の柱。「経済状況が悪いときに経営をどうするかで将来が決まる」と話し、かつてバラやラン栽培が儲かるからと地域で盛んになったとき、「自分は適地適作がもっともリスクが少ない判断」し、米麦を中心とした経営を進めてきたという。「考えてみれば米と麦はいちばんのロングヒット商品」。そうした考えのなかから、「もち麦」の生産を手がけ、せんべいやクッキーなどの加工事業へと発展させた。
    「農業のいちばんおもしろいところは実践すれば成果が出てくること」と話し、こうした実践をする農家の元にJAの担当者が足を運んでお互いに知恵を出しているか、と問いかけ、「TACといわれも実際は姿が見ない」と手厳しい批判も。 「農家にかつてはあったやる気がなくなってきたのは、JAとの日常的なつながりのなかでの的確な組合教育体制をつくらなかったからでもある」と指摘し、「TACも金融リーダーも動いていないと地域で情報が途絶える。変わっていくぞという意気込みで行動に出てほしい」などと話した。

(2009.01.30)