世界的な金融・経済危機の中でピンチをチャンスにチェンジへスタート−−そんな思いをこめて(社)農協協会・農業協同組合新聞は「2009新年の集い」を1月22日夕、東京・大手町の東京會舘(アーバンネット大手町ビル)で開き、JAグループや農業関連メーカーの代表、研究者など約220人が集まり、情報交換や危機に立ち向かう新年の抱負などを語り合い、和やかな歓談のひとときを過ごした。 |
◆「危機突破」への話題に花が咲く
「新年の集い」の会場風景 |
今年の集いは、民俗芸能に欠かせない日本独特の楽器である篠笛の音とともに始まった。
農協協会の中川敞行会長は開会あいさつで、この集いの参加者が年を追って増えてきていることを挙げ、農協協会に対する支持に改めて感謝の言葉を述べた。
また昨今の報道には「危機」という言葉が幅広い分野で使われているが、この情勢に決して負けたりはしないように農協協会も力を振り絞ると決意を語った。
会場には、この集いに協賛する全国のJA24組織をはじめ各団体や農業関連メーカーなどから贈られた特産品や特徴製品など自慢の物品がずらりと並んで、福引きの賞品となった。参加者数と併せ、協賛品もまた昨年よりぐんと増えた。
来賓あいさつでは近藤基彦・農水副大臣が今秋開くJA全国大会について「ぜひとも立派な決議をつくってほしい」と期待。「生産者だけでなく消費者にも喜ばれるJAグループであり続けるように」とエールを贈った。
国会議員では山田俊男参議院議員(自民党)と筒井信隆衆議院議員(民主党)があいさつした。
実体経済の悪化がどう農業に影響を及ぼすか懸念が深まる中で全国連の対応については、JA全中の土屋博常務が「JAはこれまでも大きな変動の波にもまれてきたが、そのつど的確な対応で農業と農家組合員の営農と生活をサポートしてきた」とし「今後も的確な対応をやっていける」と自信をのぞかせた。
JA全農の加藤一郎専務も経済界では大手各社が次々に決算書を下方修正する中で「全農としては何とか事業計画を達成したい」とし「そのことが全農の底力を内外に示す良い機会だと思っている」と意欲をみせた。
あいさつが続いた後、土屋常務、加藤専務、JA共済連の中村純誠常務、家の光協会の下川正志常務と中川会長が威勢よく鏡開きをした。
乾杯の発声ではJAいわて花巻の高橋専太郎組合長が「WTO問題あるいは市場原理が優先する中でJAをどう運営すればよいのか農業の現場、JAの現場はほんとに大変な状況下にある。今こそ、みんなの力を合わせて日本農業とJAを守っていかなければならない」とあいさつした。
篠笛を演奏する鯉沼廣行氏(右)と金子由美子さん |
参加者のコメントでは経済学者の宇沢弘文氏が金融危機の震源となったアメリカを批判。また熊本県経済連の上村幸男組合長が「今年はたくさんの難題が重なっており、その意味で今年は新しい日本農業とJAグループの出発元年ともいえる」と語った。また東京農工大の梶井功名誉教授が今秋のJA全国大会に対する期待を述べた。
今年の歓談では▽オバマ米国大統領就任に対する評価▽WTO批判▽新自由主義と市場原理主義の破たんなどの話題に花が咲き、また危機突破へピンチをチャンスに転じる逆転の発想や挑戦の意欲が大事とする論点などもあった。
アトラクションでは鯉沼廣行氏と金子由美子さんの篠笛の演奏があり、会場は郷愁を誘う清澄な音色に耳を傾けた。篠笛は女竹(めだけ)で作る。鯉沼氏は黒沢明監督の映画「乱」などで横笛指導と演奏を担当した。
集いの最後には恒例の福引きも楽しんだ。
◆農協協会「新年の集い」
あいさつ要約
中川敞行
(社)農協協会会長
この新年の集いが年々盛況となっていることは、ひとえにみなさま方のお陰であり、主催者として心からお礼を申し上げます。
昨今の報道には金融危機をはじめとして「危機」という文字があふれており、日銀の判断では情勢悪化の根は深いということです。
そうした中でJAグループは困難に負けないようにがんばってほしいと願っております。農協協会も新聞などを通じて力を振り絞って的確な報道をしていきたいと考えております。
今宵は数々の課題と取り組みながら展望を開いていく意気込みや協同精神などを談論風発で語り合っていただきたいと思います。
近藤基彦氏
農林水産副大臣
農協協会が81年という長きにわたって農業協同組合新聞を通じて農業・農村の魅力を読者に報せ、また協同組織の調査研究を通じて協同組合活動に貢献してきたことに深く敬意を表したいと思います。
さて私にとって昨年は大変な思いで1年を乗り切ってきましたが、今年は国民の信頼を回復すべく反転攻勢をかけてがんばっていきたいと思っています。
手始めに、今年は食料・農業・農村基本計画の見直し時期に当たっているため今月末くらいから、その検討を開始する予定です。
JAグループでは今年10月に3年に1度の全国大会を開きますが、ぜひとも立派な決議をつくって、生産者はもとより消費者にも喜ばれるグループであり続けるように、我々としても全面的にバックアップしたいと考えております。
土屋 博氏
JA全中常務
JAはこれまでも経済社会の大きな変動の波にもまれてきましたが、そのつど的確な対応で農業と農家組合員の営農と生活をしっかりサポートしてきました。今後も的確な対応をやっていけると考えています。
今の危機的な農業・農村の状況の中で一部の人たちは、農協は十分に機能していないのではないか、農業を支える力をほかに求めるほうがいいのではないかといいますが、私は、それは見当違いだと考えます。
農家組合員一人ひとり、そして地域農業としっかり結びついて取り組むのはやはり農協以外にはないと思います。
今後、ますますJAグループへの期待は大きくなり、また責任も大きくなると考えています。
加藤一郎氏
JA全農専務
農協新聞の紙面はきわめて質が高く、この新聞をもり立てていく意義は協同組合精神からしても非常に大きいと思います。
金融業界や製造業界では各社とも決算書を大幅に下方修正しつつありますが、全農としては何とか事業計画を達成したい、そのことが全農の底力を示す良い機会だとがんばっています。
東洋経済新報による学生の人気企業ランキングでは全農の順位が大幅に上がりました。全農は今年の職員新規採用計画を150人としましたが、すでに1万4000人もの学生が全農を希望しているとのことです。
そうした大きな期待を受けて全農は今後とも厳しい情勢に挑戦していく決意を新たにしています。
中村純誠氏
JA共済連常務
農協新聞にはいい記事が多く、例えば市場原理主義批判などで溜飲の下がる思いで読むこともあります。
JA共済について、長期共済の契約世帯は1200万戸ありますが、これらの全戸訪問を平成21年度までの今次3か年計画の中で続けております。
JAと一体となって今、120〜130万戸を回り終わり、契約内容の問題や、その他の問題をきちんと説明させていただくという活動をしています。
今年はJA全国大会があり、私どもの次期3か年計画策定もこれからですが、食の安全安心に対する関心の高まりという大きな追い風を受けて、より良い計画をつくっていきたいと考えています。
下川正志氏
(社)家の光協会常務
大正14年発刊の『家の光』はこの5月号で創刊1000号を迎えます。農協新聞より3歳ほど年上です。
この節目を迎え、まず第1点は「生活防衛」をキャッチフレーズとした記事を充実させていきます。
第2点は組合員とJAを結びつけるコミュニケーションツールとしての役割をさらに強める企画を充実させます。
第3点は食農教育をしっかりと進め、併せて女性組織を元気にする企画を強化して参ります。
さらにはJAの組織基盤の強化に向けてJAの教育文化活動支援を充実させます。
JAと組合員と地域住民を結びつけるような様々な活動の強化を図っていきたいと考えております。
山田俊男氏
参議院議員
この会場には全国からそうそうたるJAの組合長さんらがお見えになっています。このことからも農協新聞の良さがうなづけます。
私も相当の回数で紙面に登場させていただいて、そのつど対談相手の大学の先生方から、大事な視点を思い出させてもらったり、指摘をいただいています。
ところで私のメルマガは週に1度くらい出していますが、3000を頭打ちにそれ以上は進みません。
これを機会に、ここにお集まりのみなさま方にぜひ見ていただきたいと思います。
今夜は新人の参議院議員全員で麻生太郎総理に会いますが、私としては農業が大事、食が大事ということなどをしっかりと強調してきたいと思っています。
筒井信隆氏
衆議院議員
民主党は1月20日に1次産業全体についての総括的な政策をまとめた農林漁業農山漁村再生法案というのを国会に提出しました。
4本柱の第1は食料自給率向上で政権獲得後10年以内に50%、その後10年以内に60%、その後は100%を目指してがんばります。
第2は一次産業全体を所得補償・直接支払い制度の対象とし、農業については生産数量目標に従い販売農家に生産費と販売価格の差額を中心に補てんします。
第3は安全問題で全食料のトレーサビリティと全加工食品の原料原産地表示義務化をうたいました。
第4は6次産業化路線で農業者が2次、3次産業に進出する場合に所得補償の加算措置の対象にします。
宇沢弘文氏
経済学者
私は経済学が専門ですが、中学の時から農業経済学の東畑精一先生に親しくしていただいて、その教えをずっと守ってきました。
先生にいわれて農林省の農林水産技術会議の委員をやりましたが、「農業生産は国民総生産の4%以下。情けないよ」などという農林官僚の意気地なさには我慢なりませんでした。4%にしたのは自分たちではないかといいたいのです。
私は今の政府も信用しません。
食料自給率向上をいうよりも人口の20%ほどを農村に定着させる必要があると考えます。
食料を作る人たちが農村に住んで、地域の文化と歴史、自然と人間を守っていく。
そういう人たちを育てることが大事です。
上村幸男氏
熊本県経済連会長
例年に比べ今年はとくに難題が重なっています。その意味で新しい日本農業とJAグループの出発元年ではないかと思います。
私たちは、どんな日本農業、どんな地域農業をつくるのかを問われています。併せて協同組合活動をどう進化させていくのかということも問われています。
新しい風が吹いていますが、これをどうつかむかが今年の大きな課題です。
私どもは「熊本は1つ」を合い言葉に熊本ブランドマークを作って農畜産物の生産・販売をしています。
なによりも消費者の視点で生産し、提供していくという熊本の農業を目指しています。大変な時代ですが、さらに知恵と力を発揮していきたいと思います。
梶井功氏
東京農工大学名誉教授
WTO農業交渉が再開されたら、日本は改めて各国農業の共存を求めるための国際協定はどうあるべきかという問題を真っ先に持ち出して議論してほしいと思います。日本政府は、今までのWTO交渉の進め方は根本からおかしいんだという問題提起をすべきです。
農水省のプランでいう耕地利用率を110%に引き上げる問題については、農業の衰退が最も激しい西日本での利用率を130〜140%くらいに引き上げないと全国で110%になりません。
そこで九州・四国、近畿などにはテコ入れが必要ですが、農水省はそうした政策を示していません。
今年のJA全国大会が農政はこうあるべきだと提案できるかたちになることを期待しています。
『2009新年の集い』には全国のJA、団体、農業関連メーカーから数多くの特産品や特徴製品の協賛を受け、盛り上げていただきました。 【JA】 ◎JA千葉みどり 葉付き大根ときゃべつ ◎JA津軽みらい りんご・津軽サンふじ ◎JA十日町 きのこの詰め合わせ ◎JA東西しらかわ キムチ ◎JA富里市 ハムセット(房総ポーク) ◎JAにじ 富有柿(冷蔵貯蔵) ◎JAはが野 いちご・とちおとめ ◎JAはだの 乾麺 ◎JA福岡市 いちご・博多あまおう ◎JA松任市 松ちゃんのごはん(包装米飯) ◎JAみやぎ登米 特栽米・ひとめぼれ(環境保全米) ◎JA三次 しょうゆドレッシング、ポン酢しょうゆ、柚子ドリンクのセット 【団体】 【メーカー】 ◎協友アグリ(株) 干し柿(市田柿) ◎クミアイ化学工業(株) お茶(静岡県産) ◎(株)サカタのタネ 栽培セット・キッチンベジタネまきはじめてセット(ベビーサラダ) ◎(株)サタケ マジックライス(お湯や水でご飯になる非常食) ◎シンジェンタジャパン(株) 鉢植え ◎全国農協食品(株) 南高梅「紀南一番」 ◎全農チキンフーズ(株) サラダチキン ◎全農パールライス東日本(株) 新潟県産こしひかり ◎全農ミートフーズ(株) 国産豚ロースのみそ漬け ◎(株)東洋精米機製作所 金芽米(BG無洗米)間寛平のアースマラソンをサポート ◎日本農薬(株) 保温・保冷レジバッグ ◎日本ミルクコミュニティ(株) ヨーグルト詰め合わせ ◎ハラダ製茶(株) エーコープ銘茶 ◎星野物産(株) 乾麺・手振り麺 ◎北興化学工業(株) 胡蝶蘭 ◎保土谷UPL(株) バウムクーヘン ◎明治製菓(株) チョコレート詰め合わせ(メルティキス、コパン) |