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農業の特殊性は承知 WTO・ラミー事務局長が全中茂木会長と会談

WTOラミー事務局長 2月24日から日本政府の招待で来日していたWTO(世界貿易機関)のパスカル・ラミー事務局長は25日午後、JA全中特別会議室で茂木JA全中会長と会談した。 茂木会長はWTO交渉について「ドーハラウンドは自由化のみ追求されていて、貧困、飢餓問題がないがしろにされているのではないか。食料、エネルギー、金融の危機への反省と、地球温暖化など時代の変化を交渉に反映させるべき」と主張、また、昨年のFAO食料サミットや洞爺湖G8サミットでの世界の食料安全保障に関する議論も取り入れるべきだと話した。 そのうえで現在のファルコナー農業交渉議長案で重要品目数が最大6%とされていることについて...

WTOラミー事務局長
WTOラミー事務局長

2月24日から日本政府の招待で来日していたWTO(世界貿易機関)のパスカル・ラミー事務局長は25日午後、JA全中特別会議室で茂木JA全中会長と会談した。
茂木会長はWTO交渉について「ドーハラウンドは自由化のみ追求されていて、貧困、飢餓問題がないがしろにされているのではないか。食料、エネルギー、金融の危機への反省と、地球温暖化など時代の変化を交渉に反映させるべき」と主張、また、昨年のFAO食料サミットや洞爺湖G8サミットでの世界の食料安全保障に関する議論も取り入れるべきだと話した。
そのうえで現在のファルコナー農業交渉議長案で重要品目数が最大6%とされていることについて「この数では(重要品目指定の)取り合いが起きる。農業者が結束して安心・安全な食料を供給しなければならないのに、逆に分断を招く」と強調したほか、関税割当拡大は生産者も消費者にも混乱を与えること、砂糖、でん粉の関税割当新設は地域経済にとって重要、上限関税は容認できないことなども伝えた。
これに対してラミー事務局長は自分は交渉当事者ではないと断ったうえで、農業分野での日本の懸念と農業の特殊性については承知しており「ドーハラウンドが終結しても、農業では工業やサービスよりも高い補助金や国境措置が残るだろう」と述べた。
ただし、市場アクセスの改善も交渉の約束事項となっており「それを満たす判断をしなければならない」として、重要品目の数や関割拡大などの問題について「(茂木会長が提示した)すべてではなくどこにプライオリティー(優先順位)を置くかではないか。交渉の状況を評価すると抜本的な調整は困難ではないか」などと話した。
また、地域経済の活性化、農業者の生計が困難になることへの懸念に対しては「WTO上は緑の政策で対処することになっている」と指摘するとともに、「輸入国もあれば、輸出に強くそれで生計を立てている国も世界にはある。柔軟性をもって妥協を図っていかなければならない」とした。
食料安全保障の問題については「WTOの役割は世界規模で考えること。過剰の国から不足している国へ貿易を通じて移転させていくというのがやり方のひとつ。一国の食料安全保障が他国の非安保になることもある」などとの考えを強調した。

◆「米国の出方次第」

ラミー事務局長は24日夜には石破農相とワーキングディナーをもった。
会談でラミー事務局長は保護主義の台頭に懸念を表明、石破農相も「対抗する必要性」を強調した。今後の閣僚会合開催の見通しについて農相は「中身がともなわなければならない」と話したのに対してラミー氏は「夏までにもという話があるが、米国の体制が整うかどうか。米国次第だ」と述べた。オバマ新政権が発足したが、米通商代表部(USTR)の体制はまだ議会で承認されていない。ラミー氏は米国が議会との調整を経て交渉のテーブルにつける体制になっていない以上、閣僚会合開催は難しいとの認識を示したものだ。
また、農業交渉について農相は「各国の農業が相互発展するようセンシティビティに配慮した貿易づくりが必要」と強調した。これに対しては交渉の状況として、議長案にある重要品目数4%プラス2%案を「日本は受け入れられないとしていることはみな知っている。また、日本が主張している8%は各国に受け入れられていないということだ」と現状認識を述べたが、交渉促進への貢献などについては言及しなかったという。

(2009.02.26)