◆水田農業改革が焦点
特命チーム会合の第1回会合では6大臣会合の目的として、食料の安全・安心を確保するため農政について「スピード感を持ってあらゆる角度から、省庁の垣根を越えて活発な議論をすること」が総理の指示だと説明。特命チームは4月前半をめどに改革の方向をまとめて閣僚会合に報告することになっている。
第1回会合には小野義博・神奈川県副知事、南部厚志・滋賀県湖北町長、大須賀一朗・福島県白河市農政課長が意見を述べた。
小野副知事は、消費地でもある神奈川では野菜などを中心とした農業生産額はあげられているが、バブル期以降、農地転用が進んでおり「農振地域指定をはずしてほしい」の声もあり今年度も200ha転用されるという。地域の実態にあった農地規制がないと農地が守れないと主張した。また、若い担い手育成も課題だが意欲ある定年者を「中高年ホームファーマー」として農地の守り手とすることも考えるべきなどと話した。
南部町長は地域の農業者は専業だが高齢で後継者がいない層、規模は大きくなくても独自の販路で経営している層、高齢化で農地を引き受け100haを超える経営をしながら経営は厳しいグループに分けられると紹介。規模拡大だけではなく、米と園芸の組み合わせで経営をするなど販売戦略をもった経営が必要だが、一方で規模拡大意欲のある担い手がいないと「農地を維持できない実態もある」と指摘。地域の実情に合わせ地方自治体に政策づくりを任せることも必要になっていると主張した。
大須賀課長は、基幹産業の米では所得が上がらず、「あと5年持つか」というのが実状と話した。個人では限界のため集落営農組織づくりを進めてきており、行政も支援事業を展開。地域のなかで担い手を育てる必要性を指摘した。
一方、生産調整問題では未達地域。その理由に「かつては集落全体で達成すればよかった」が、米政策改革以降、個人の目標となったために理解が得られていない実態を話した。
焦点のひとつの生産者への直接所得補償については「改革が進んでいくかどうかがポイント」(南部町長)、「農家は米を作りたい。米に代わるものへの所得補償をすべき」(大須賀課長)などの意見があった。
◆ゴールが見えない
第2回会合(2月20日)には平和男氏(北海道新得町)、忠聡氏(新潟県・神林カントリー)、木内博氏(千葉県・和合園)、清水紀雄氏(兵庫県篠山市)、笹森義幸氏(宮崎県国富町)、富士重夫・JA全中常務が意見を述べた。
北海道の畑作地帯の平氏は1000haを50人で経営している大規模地帯で欧州レベルに肩をならべるようになっているのに経営は厳しく、より意欲を喚起するような施策が必要になっていると話した。
野菜生産の木内氏は農産物は「オーバーストアでデフレ状態」と指摘、農業は製造だけではなく加工、販売まで考えなければ生き残れないとし、小売や外食などと結びつく必要性を訴えた。
25年前に米の大規模経営をめざして法人化した忠氏は、米価下落で規模拡大メリットが感じられない状況だと話し、「どこまで拡大していけばいいか。ゴールがみえない。片方で高齢化が進み農地を引き受けてほしいというニーズにも応えなければならない」と現場の実態を紹介した。米経営への支援策としては一定量についての価格下支え策が必要ではないかと述べた。
清水氏は、10年前は家族で55haの水田経営をしていたが米価が下がりコストは上昇するなかで規模を24haまで縮小。後継者だった子どもも転職を余儀なくされたという。農村のなかで地域経済が循環するような仕組みをつくり農産物販売をしていく取り組みも必要ではないかと話した。
肥育農家の笹森氏は和牛は店頭ではブランド品として高価格が売られているが、飼料高騰などで生産現場は「ふるいにかけられている」。資金力がないと出荷まで持ちこたえられないため飼養頭数を増やすのは大きなリスク。かかった経費から価格が決められないことから、経営を補償する制度があってもいいはずと指摘した。
全中の冨士常務は経営の将来展望と地域振興を図るため、農業経営や地域の目標となる生産額目標と設定、価格と生産量を拡大する戦略の必要性や、品目別の経営安定対策づくりが必要だと述べた。
◆自給率向上に向けた動き大事
第3回会合(2月24日)には、阿南久・全消連事務局長、加藤さゆり・全地婦連事務局長、品川尚志・日本生協連専務、平吹信司・(株)グリーンハウス執行役員、福田高志・(株)アイスクウェア社長が出席した。
消費者団体からは「消費者を日本農業のパートナーとしてとらえる」、「生産者と消費者が協働できる農政」へなどが提起されたほか、いずれも自給率向上が求められていると主張した。ただし、政策や価格形成の透明性、国際交渉についての分かりやすい情報提供などが農政に関心を持つには必要だとした。また、休耕田が増えていることを挙げて減反政策の見直しが必要だとの意見も出た。
米の小売り価格が現在より下がれば「もっと消費は伸びる」といずれの出席者も話した。外食産業の平吹氏は玄米価格が低下すれば、付加価値のあるメニューの提供によって米を使う場面が増えるだろうとし、野菜卸の福田氏もメニュー変更でごはんを使う料理が増えるのではとした。
平吹氏は、契約産地には1シーズンに数回足を運び生産者と交流することを重視、「前向きな生産者と信頼関係ができれば、たとえば豊作になってもこちらはメニューを拡大してでもその野菜を使おうと思う。メニューというスクリーンを通せば生産調整はできる。基本は人と人との関係。野菜は国産しか信用できない」と述べ、食品加工業との連携が農業には重要だと述べた。
福田氏は小売りでは表示によって消費者は国産を選ぶと述べ、ただし、産地にとっては農業経営の安定化のためには加工業務用の契約栽培を進めるべきではないかと話した。
また、自給率向上については「45%か、50%かという(数字の)問題ではなく自分たちの食料はこうすると決めていくことが大事。自給率向上に向かって動いていくことが大切では」と指摘していた。