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トウモロコシ輸出量、減少の見通し示す バイオエタノールの生産目標を上方修正

‐米国の2018年見通し

オバマ大統領の就任で農業政策、バイオ燃料政策にどんな変化が現れるのか――。

◆演説ではトーンダウン

  オバマ大統領の就任で農業政策、バイオ燃料政策にどんな変化が現れるのか――。2月24日の施政方針演説が注目されたが景気対策、金融安定化に多くの時間が割かれ、環境・再生可能燃料関係に触れたのは60分のうち2分ほど。
  内容は「太陽光発電はドイツや日本に遅れ新しいハイブリッド・バッテリー技術は韓国に遅れている。しかし、もう一度この分野で米国が主導権を握る時代が到来した」「米国再生計画で3年間で再生可能エネルギー国内供給量を2倍にする」「この1年間で風力発電、太陽光発電、先端バイオ燃料、クリーン石炭、低燃費車に明るい将来展望が見込めるように技術開発に150億ドルを投資する」など。また、さらなる再生可能エネルギー生産に向けた法案可決を議会に求めることなどにも言及した。
  が、年頭演説をウォッチングしてきた農林水産政策研究所の小泉達治食料領域主任研究官は「エタノール政策に関してはトーンダウンした感じ。やはり世界的な経済危機で景気回復や金融安定策など何が優先順位が高いか確認するのが演説の意味合いだったのではないか」と話す。

◆依然ほど伸びないが…

  2月13日に米国農務省が公表した2018年までの主要食料の需給予測によると、バイオエタノール生産については今後も生産は続くものの、そのペースは過去数年の急激な拡大ペースにはならないとしている。
  米国がバイオ燃料原料としているトウモロコシ価格は08年6月に1ブッシェル7.5ドルと史上最高を記録。米国はバイオ燃料政策で穀物価格つり上げを狙っているとの批判が強いが、バイオ燃料の需要拡大が食料価格引き上げにどれだけ影響を与えたか実証的な研究も発表されている。
  08年5月には国際食料政策研究所(IFPRI)が「トウモロコシ国際価格に20%影響している」と推計。世界銀行は7月、「75%程度の影響を与えている」と推計した。これに対して米国ホワイトハウス筋は「わずか3%程度の影響しかない」との試算を発表。理由は、天候、新興国需要の拡大、原油価格高騰、投機資金など複合要因が絡まり、バイオ燃料だけの影響ではないというものだ。
日本でも小泉氏が1月末に推計結果を発表している。これは現行の農業・バイオ燃料政策が継続することを前提に、07年から08年にかけて米国でまったくエタノール生産が行われなかった場合の価格動向を分析したもの。その結果、約22%の下落となった。つまり、価格上昇には22%程度が影響しているというIFPRIと同じ予想になったのである。
  穀物価格上昇への影響は決して小さくないというデータがこうして国際的に示されたこともあって、米国ではバイオ燃料政策を煽るようなトーンが陰を潜めているのではないかとみられる。

◆米国の農家の動向は?

  しかし、2月発表の需給見通しに添付された図表では、2022年のバイオ燃料生産目標150億ガロンに対し18年で146億ガロンとなっている。小泉氏によると昨年同時期に出された10年後予測では140億ガロンだったといい「実は今回は上方修正されています」と指摘する。
  それでも米国はこれまでエタノール向け需要が伸びても輸出は安定的に確保できるとしていた。ところが今回の見通しでは輸出量は07/08年の2436百万ブッシェルが08/09年では1900百万ブッシェルと減少、その後、やや回復するが18/19年では2225百万ブッシェルと07/08年水準には届かない。
  「あまり注目されていないが輸出量が下がってしまうという見通しは初めて出したものです」。
トウモロコシ価格は昨年夏から大きく下がり、3月は1ブッシェル3.8ドル。肥料価格など生産資材高騰のなかで、米国の生産者がこの価格水準でどれだけトウモロコシを作付けするか。
  一方でエタノール製造工場も苦境だ。原油価格下落につれてエタノールも下がり、昨夏には1ガロン3ドル近くだったが、現在はその半値に近い。原料のトウモロコシ価格が下がっても製造で使う天然ガスなどコストなど考えると採算割れで稼働率も低下しているという。昨年秋には大手工場も倒産。コーンベルト地帯に急増したエタノール製造工場も「再編合理化を進めていいかざるを得ない」(小泉氏)状況。今後の米国トウモロコシの生産・供給動向は相変わらず不安定要素が多いようだ。

(2009.03.19)