協同組合懇話会は9日、政治評論家森田実氏の講演「ゆれる内外情勢と日本の進むべき方向」を聞いた。日本は70数年前、大不況・大失業の打開策を戦争に転化させたが、その大失敗を2度とくり返してはならないと氏は警鐘を鳴らした。講演内容は多面的だったが、その一部を紹介する。
◆軽蔑される日本
最近オランダの福祉政策の評価が高い。あちらの大企業には世界で稼いだカネをみんなの幸せのためにと惜しげもなく差し出す姿勢がある。それに比べ日本の経営者は自分の損になることは一切やらないという哲学を基に“自分さえ良ければそれで良いという主義がなぜ悪い?”と開き直る。
消費税ができてから20年間に国民が負担したのは220兆〜230兆円という計算だが、大企業の減税額はその大半の180兆円ほどとなっている。消費税を取って、そのカネで大企業を保護してきた、といえるかどうかは別として数字上はそうなっている。
最近はテレビの討論番組などでも、大企業だけを保護するのは問題だとの意見が多いが、大企業の代弁者である竹中平蔵元経済財政担当相らは、大企業に負担を求めると、みんな海外へ出ていって国内の雇用がなくなるなどと反論する。
海外メディアの日本批判も中川昭一前財務金融担当相の酩酊会見と、実質GDPのマイナス12.6%という数字発表から〈日本は世界経済を崩壊させていくのではないか〉と非常に厳しくなった。日本のマイナス速報値はヨーロッパより悪く、アメリカの2倍もの落ち込みとなっている。
〈中川のような人間を批判しないで守ってきたのはマスコミではないか〉との論評もあり、『ニューズウィーク日本版』3月11日号は「世界が呆れる」「ポンコツ政治」と書いている。 第2次世界大戦前の軍国主義政府も世界から随分批判はされたが、ここまで軽蔑されたのは初めてだ。
◆民営化の裏には
問題はマスコミだ。03年ごろだったかに「アメリカの保険業界が日本の郵政民営化を進める宣伝をするために5000億円を日本の巨大広告会社に出した」といううわさがウォール街に流れていることを聞いた。
アメリカは80年代始めから日本の郵便貯金や簡易保険など郵政資金350兆円を吸い上げようとねらって規制緩和を求めてきた。
そこで、私はうわさの真偽を確かめたところ、否定する人はなく、また「アメリカの常識として、広告費は原則として、ねらいの1%だから350兆円に対して5000億円では安すぎる」という話も出た。
結果として日本のマスコミは新聞もテレビも、民営化は正しい、規制緩和は正しい、官営は間違っているとの宣伝を徹底して日本国民はマインドコントロールされたかたちとなった。
こうした宣伝を日本の広告会社に依頼したのはアメリカの巨大広告会社で、テレビ宣伝の場合、番組内容だけでなくキャスターまで洗脳してしまうというプロジェクトを考えたようだ。
私はできるだけテレビに出て「民営化は間違っている」と主張したが、結局は敗北した。今後は国民1人々々が見識をもってマスコミの一方的報道に立ち向かわないといけない。
小沢一郎民主党代表の秘書による政治資金規正法違反事件についてインターネットには陰謀説ばかりが出てくる。その側に立った場合私には検察の“郵政隠し”という見方がある。
◆アメリカが恐い
というのは東京地検特捜部への内部告発が多いのは西松建設関係と、かんぽの宿などの売却をめぐる日本郵政関係だ。どちらを優先的に追求するかで特捜は西松関係を取ったようだ。
かんぽの宿払い下げ問題などを事件にすればロッキードやリクルート以上の大事件になると私は見る。
ところが西川善文日本郵政社長は三井住友銀行の出身であり、その裏にはアメリカの証券会社ゴールドマンサックスがある。このため検察はアメリカがらみの郵政には余り触れたくないとして西松を重点とし、国民の目を郵政からそらそうとしたのではないか。
郵便局長に聞くと、民営化前に各局に保管されていた貯金・保険関係の書類が今春すべて「三井倉庫」に運び込まれ、また送られてくる資料なども三井住友銀行と印字された箱に入っており、日本郵政はまるで、その子会社になったようだとのことだ。
不況対策としてはカネの供給を急ぐべきであり、積極的な財政出動に踏み切るべきだ。そして公共事業をどんどん実施し、ケインズ経済学を実行することが求められる。