農林水産省は4月7日、耕作放棄地全体調査結果を公表した。
この調査は耕作放棄地の解消のため、その位置と農地の状況を外形的に把握するために実施したもの。現状では耕作できなくても、草刈りや耕起、抜根などをの手当てを行うことで、今後、農地として利用できるかどうかに注目した。
全国1788市町村のうち1785市町村が行政と農業委員会で現地調査を行った。その結果を「緑」(草刈り、耕起、抜根、整地などを行うことで耕作することが可能な農地)、「黄」(基盤整備を実施して農業利用すべき土地)、「赤」(森林・原野化した農地)に分けて集計した。
3月末までに報告があった1777市町村の集計では「緑」6.9万ha、「黄」5.7万ha、「赤(非農地とするかどうか判断未了)」7.8万ha、「赤」(非農地と判断)2.7万haだった。
農林水産省では未報告の市町村があるため、この集計結果をもとに全国の耕作放棄地を推計したところ、何らかの手当てをすれば耕作可能な「緑」と「黄」は14.9万ha、外形上森林原野化した「赤」は13.5万haで合計28万4000万haとなった。
これまで耕作放棄地は38万6000haとされたきたが、これは農林業センサスに基づくデータ。センサスでは農家に耕作の意思がない土地も耕作放棄地としてカウントされている。一方、今回の調査は農地の外形から農地利用が可能かどうかを判断したため、調査結果に差が出た。
昨年12月に農林水産省が発表した食料自給率50%の実現に向けたイメージでは、耕作放棄地を10万ha解消することを掲げている。
今回の推計では農用地区域内の「緑」または「黄」の耕作放棄地は8.3万ha。農林水産省は平成23年度までにこの面積の解消と、農用地区域外の耕作放棄地からも2万ha程度、農用地区域に組み入れて解消を図るとしている。
◆解消対策に206億円
今回の調査では桑畑などが多い地域で森林、原野化し農地として復元することが不可能な「赤」の面積が目立つ。また、全体の面積も13.5万haと耕作放棄地全体面積の4割を占めた。ただ、調査結果について、緑、黄などと耕作放棄地の状態が初めて明らかになったことから農林水産省では「今まではまったく手がかりがなかったが、当面、解消しなければならない区域はどこか、次のステップに行く条件が整備された」としている。
耕作放棄地を解消するためには(1)農地の引き受け手、(2)土地条件、(3)何を作物に選ぶか、などの要件をクリアしなければならない。
21年度予算では耕作放棄地再生利用緊急対策交付金として206億円を確保。
再生作業には10aあたり3万〜5万円、土壌改良に同2.5万円などが措置されている。また、米粉や飼料用米、麦、大豆以外の作物を作付けて耕作放棄地を解消し、営農再開をする場合は、営農定着支援として同2.5万円の交付も実施される。
そのほか、直売所や加工施設をつくるなど営農再開のため販路を確保する取り組みにも補助があるほか、担い手に農地利用を集積する支援策もある。
また、水田農業ビジョンなどの戦略への位置づけと、飼料用米や米粉用米などへの支援策を活用することも考えられる。
農林水産省ではこれらの支援策を組み合わせて耕作放棄地の解消に取り組むことが重要だとしている。
●21年度予算のおもな耕作放棄地解消対策 【耕作放棄地再生利用緊急対策交付金(新規)206.5億円】 (1) 再生作業(障害物除去、深耕、整地等):荒廃の程度に応じ3万または5万円/10a(取組初年度のみ) (2) 土壌改良:2.5万円/10a(最大2年間) (3) 営農定着(大豆・麦・飼料作物・新規需要米を除く):2.5万円/10a(1年間) (4) 施設等補完整備:直売所・加工施設、用排水施設、鳥獣被害防止施設 (5) 調査・調整支援:農地利用調整や営農開始後のフォローアップなど (6) 指導支援:(1)〜(3)に取り組む主体への指導・助言 |