今回決定したのは改革の「検討方向」。今後、農林水産省内で各項目ごとに内容を検討し、6月上旬をめどに特命チームの議論を再開、8月上中旬に「農政改革の基本方向に関する中間取りまとめ」を整理する。
「検討方向」では農業・農村の現状について「産業としての持続可能性の喪失の危機に直面している」とし、一方、世界の食料需給がひっ迫基調となり、「もはや経済力さえあれば自由に食料が輸入できる時代ではなくなってきている」ことを強調した。
そのうえで現行のあらゆる農業政策について検証し、(1)産業としての持続性の再生、(2)安定的な食料供給力の再生、(3)農村の活力の再生の3つを改革の目的とした。
今回の改革について特命チーム長の針原寿朗総括審議官は「農業・農村の潜在的なパワーを発揮して元気にするための改革」と強調する。
検討項目は(1)食品の安全性の向上、(2)担い手の育成・確保、(3)農地問題、(4)農業生産・流通施策、(5)農業所得の増大、(6)食料自給力問題、(7)農山漁村対策など。そのほか農商工連携の強化、バイオマスなど新分野への挑戦も挙げた。
このうち担い手問題では、十分な所得が確保できる担い手の育成とともに、「絶えず新しい人材が農業に参入できる環境づくり」がもっとも優先される課題だとして、▽新しい担い手の参入を促す仕組み、▽担い手を育てる仕組み、▽担い手を支える仕組み、の3つを体系化し総合的な対策をつくる方向で検討を行う。
農地問題については
「所有」から「利用」への転換を打ち出した改正農地法案に即して具体策を検討。とくに資産保有的な所有傾向を打破し改革の実効をあげる対策を検討するとしている。
農業生産対策では「需要を起点に売れるものを作っていくことが大原則」と検討方向を強調。また、土地利用型農業・穀物生産についての政策は、戦略的に自給力を向上させるうえで重要だが「施策が細分化され、目的が現場に浸透していないものも見られる」として、戦略的穀物生産の「総合化を図るべき」であるとした。
◆生産調整で国民的議論
米の生産調整問題については、転作作物への助成や、米価下落への措置など、いわゆるメリット措置に対する実施者の不公平感があることが指摘されている点で検証が必要だとしながらも、今年度から米粉生産、飼料用米など水田フル活用政策が導入されたとしてその実行状況を検証しながら生産調整のあり方を考えていく必要があるとした。
また、農業者だけでなく消費者をはじめとする国民各層のコンセンサスの下で施策が継続できるようにするため「国民的な議論が不可欠」だとして、アンケート調査や米の生産、価格動向などのシミュレーションも示していく方針を示した。
農業所得問題については、これまで政策的論議が十分に行われてこなかったことを指摘、この15年間で農業所得が半減したことなど「問題を真正面から受け止める必要がある」とした。対策の検討方向では▽加工・業務用需要への対応、▽高付加価値化、直接販売による単価の向上、▽生産・流通コストの削減などをあげたほか、農協の経済事業のあり方を検討することにも言及している。
JAグループは新基本計画で農業生産額と農業所得の目標額を盛り込むよう提起しているが、今回の改革方向ではそこには踏み込んでいない。
政策目標の設定では、どのような政策目標を設定することが適切か、幅広い観点から改めて検討するとした。