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農地法改正に反対 -有識者らが共同アピール

-有識者らが共同アピール

 農地法改正案は5月8日に一部修正のうえ衆議院を通過したが、修正後の「改正案」でも「大企業の農地取得に道を開く懸念は払拭できない」として11日、各界著名人が改正反対の共同アピールを発表した。 改正案は審議のなかで農業参入要件に「業務執行役員の1人以上の者が農業に常時従事する」旨の規定を入れたとはいえ、“農業従事”の具体的な中身は明確ではなく、「農地を適正に利用していない場合は貸借を解除する」という条項さえあれば大企業や外資系企業を含む一般企業にも農地利用を認めていこうという内容になっている、と共同アピールは指摘した。 会見した賛同者の梶井功東京農工大名誉教授は「与党幹...

 農地法改正案は5月8日に一部修正のうえ衆議院を通過したが、修正後の「改正案」でも「大企業の農地取得に道を開く懸念は払拭できない」として11日、各界著名人が改正反対の共同アピールを発表した。
 改正案は審議のなかで農業参入要件に「業務執行役員の1人以上の者が農業に常時従事する」旨の規定を入れたとはいえ、“農業従事”の具体的な中身は明確ではなく、「農地を適正に利用していない場合は貸借を解除する」という条項さえあれば大企業や外資系企業を含む一般企業にも農地利用を認めていこうという内容になっている、と共同アピールは指摘した。
 会見した賛同者の梶井功東京農工大名誉教授は「与党幹部は(所有から利用へと)考え方は変えるが(耕作者主義という)制度の根幹を変えるものではないと発言している。しかし、改正案は制度そのものを変えるもの」と政府案は与党の考えとも違うのではと指摘した。
 また、改正案では農協も一般企業と同じように農業経営をできるようにするが、農協のあり方に疑問が生じると問題提起。共同アピールではそのほか、標準小作料の廃止や貸借契約期間50年も財力のある大企業の権利固定につながると指摘した。
 全農協労連の国分博文中央執行委員長は「大企業が所有を目的にしながら当座は自由に農地利用できる。劣悪な条件で働かされるのは火を見るよりも明らか。これは労働者の問題でもある」と批判。日本消費者連盟の山浦康明事務局長は「大規模化だけをめざした効率化、市場原理主義がありあり。農業現場との提携が広がっていく農政こそ重要。消費者としても反対する」。

富山和子氏
評論家
富山和子氏

 また、評論家の富山和子氏は「農地は単なる生産工場ではなく多面的機能を持つことがやっと認知されてきたのにこれでは逆もどり。背景には大企業による土地取り物語があって、その決定打が出てきた。危機感を感じる」と話した。
 同アピールでは、耕作放棄地が増大した理由は農地法に問題があるのではなく、「農産物 輸入自由化、市場原理によって家族農業経営が困難になったため」と強調、今求められている施策は価格・所得補償など農家に展望をもたらす政策や新規就農者支援の強化だと訴えている。全国食健連と農民連がアピールへの賛同を呼びかけ、ほかに坂本進一郎氏(農家)や暉峻衆三氏(元農業・農協問題研究所理事長)など15名が参加した。

(2009.05.13)