◇経済事業がテーマ
農林水産省は全農の不祥事を機に平成17年から経済事業の見直しを農協改革の重点として再発防止策の確立などを促してきたが、全農改革ついてはこの3月に一定の評価をして区切りをつけ、今回の研究会を立ち上げた。
高橋経営局長は「農協は社会的に重要な存在。農協のあり方は新基本計画の検討でも大きな課題となる。将来に向かって前向きな検討を」と述べ、とくに農地法改正でJA自ら農業経営が可能になることをふまえ「組合員が行っている農業(=事業)そのものにもより積極的に踏み込んでいく事業のあり方」なども課題になると話した。
会合では同省から農協の現状と課題について説明し、JA全中の向井地純一専務が第25回JA全国大会組織協議を紹介。また、JA全農の成清一臣専務がJAグループの経済事業の今後の方向について紹介した。
農水省はJA合併が進むなか経済事業の事業モデルが今後の課題だと指摘し、法人や新規参入者など多様な農業者のニーズをふまえた事業の構築が求められていると報告した。そのうえでこうした課題解決のために、JA内部から生まれている各地の優良事例を「新しい芽」として取り上げ、それを全国的に展開させるための課題を議論していくことが有効ではないかと提起した。
同省が新しい芽として挙げたのは、大規模農家への出向く活動を強化したり、JA出資法人の設立で担い手不足の解決や営農継続につなげている例、直売所をキーに地元企業と連携した販売事業展開、生産者からの「買取」による実需者への販売事業などだ。
◇地域特性をどう反映?
委員からの意見は▽食と農を基軸とした地域活性化は重要。先進事例をもとに具体策を議論すべき、▽先進事例はあってもそれが広がらない原因も検討項目に、▽JA自らの農業生産の具体策を、▽全国一律ではなく地域性、営農類型などに分けて事例を整理、検討すべき、▽ビジネスモデルをつくるJAが圧倒的に減った。主体は誰であれビジネスモデルづくりは必要。▽農協の議論を超えて農業をどうするかの視点で議論を。▽女性職員の登用もテーマなどがあった。
JA全中の向井地専務は「JA批判ではなくJAへの期待を。農業振興と農を基軸とした地域振興の両面で議論したい。議論の成果を大会議案にも反映させていく」と述べた。次回は6月25日に予定。
JAから情報発信を
鈴木宣弘座長(東京大学大学院教授)
第1回の会合終了後、座長に選任された鈴木宣弘東大大学院教授に聞いた。
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研究会の趣旨はJAのいい取り組みを積極的に紹介し、そうした事例を共有しながら、可能なJAはそれを適用してさらによりよいJAにしていこうということ。優良事例に着目し、点から面へというかたちを通じて全体を底上げしていく。これが重要で、JA批判するのではないというのがスタンスだ。今日の会合でも現場の農業、農村が元気になるようにJAはもっとがんばってほしい、といわばエールを贈ろうということになったと思っている。
JAグループ関係者以外の委員も多いが、むしろ経営やマーケティングの専門家から新鮮な視点で検証したもらったほうが改善点や、新しい事業スタイルの適用可能性なども見えてくる場合があるだろう。
基本は現場の農業、農村が元気になること。そのためにはJAがしっかりサポートしなければならない。そこに皆異論はない。
むしろ、JAはこうがんばっている、という情報をもっと積極的に発信する機会と考えるべきではないか。