◆伝えたい「協同」の心
「ひとりではよくならない、みんなでよくなったら世の中よくなる」。
小学校3、4年の頃、大好きな祖父から教えられたこの言葉が会長の心に染みついている。JA全国女性協の新しい顔となった会長の価値観を形成した「素」とも言える。スポーツでも何でも「チームプレー」が好きだという。
JA全国女性協会長という大役を担うかたわら、地元では現在、リンゴの摘花作業に追われ忙しい毎日を送っている。また、JAつがる弘前の唯一の女性理事も務める。担当はリンゴ以外の作物販売。複合経営を実現して所得をどう伸ばしていくかが取り組みの課題だ。
しかし、リンゴ以外の生産に目を向ける農家は少ないという。「リンゴ以外に目を向けない生産者は消費者の気持ちになっていない。消費者はまずおかずの材料を求めるのが普通で果物は後回しでしょう。買う側の立場を考えなければいけないのでは」と話す。価格の低下などでリンゴ農家は厳しい状況だが、生産者はリンゴが売れることだけを考えるのでなく、消費者が欲しがるもの、喜ぶものを作ることを考えなければ、先の道は開かないと話す。
「苦しくなったら、みんなで協力して上に行くしかない。それが『協同』だと思っています」
一方で、消費者にもっと農業の役割を伝えることも使命だという。
「問題が起きたときだけ食や農に関心が高まるのがまだまだ実態じゃないでしょうか。たとえば小さな農家がいるからこそ環境が守られている。これを伝えるのも、私たち生産者のやるべき仕事だと思います」
◆女性の力が地域を守る
会長が女性の強さ、女性組織の存在の大きさを感じたのは35歳のときに地元の民生委員を任されたのがきっかけだ。
地元を周り、声を聞くことで、家庭を支える女性の行動力の大切さを痛感。
「女性が助け合えば地域を守ることができる。協力し合える組織は農協婦人部しかないとそのとき思いました」
38歳からは女性部役員になって“仲間”のためにいっそう力を注いできた。女性の力は農業にも農協にとっても大きい、と確信している。