◆担い手に打撃大きく
JAグループは4月に「新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けた基本的な考え方」の組織討議案を決め、5月22日まで組織討議をしていたが、その議論をふまえ水田農業政策についての考え方をまとめたもの。
考え方では、米は国民に対し長期にわたり安定的な供給を行うとともに、多面的機能を有する水田を維持するために米の需給と価格の安定を確保することが重要であると強調し、「生産調整は今後も必要不可欠」としている。 農林水産省は米政策に関するシミュレーションを発表し、生産調整を緩和・廃止した場合の米価水準などを示しているが、考え方では生産調整を緩和した場合、供給過剰と米価下落が生じ▽生産調整実施者の米の売れ残りとさらなる転作強化、▽売れ残りを恐れる産地間の値引き合戦の激化、▽零細・兼業農家の生産継続などによる過剰在庫の累積とさらなる米価暴落、▽いったん下落した低米価の定着・固定化、▽過剰米・在庫米の膨大な処理コストで担い手経営の崩壊・地域経済への悪影響、といった厳しい事態を招くと強調している。政府が公表した生産調整の緩和・廃止シナリオではこうした事態を予想していない。「緩和すればもっと厳しい状況になる。シミュレーションは甘い」(JA全中)との認識だ。
◆手法、一定の見直しを
同時に生産調整の実効性確保、不公平感の是正のために生産調整手法の見直しついても検討する必要があると主張している。
具体的には
(1)
生産目標数量についての過去の需要実績に応じた配分の徹底
(2)
達成者に対するメリット措置の徹底
(3)超過達成者への支援の上乗せ
(4)部分達成者への一定の支援
(5)経営体の当事者間による目標配分の調整(互助金制度)
(6)国・都道府県・市町村行政による関与と支援の強化を検討すべきだとしている。
また、需給調整を実効確保するためには豊作分を市場隔離する出口対策も必要だとして(1)
すべての生産者からの拠出・国からの拠出の充実
(2)
過剰米を非主食用に市場隔離した場合の万全な支援
(3)過剰米の買取・非主食用への販売を行う備蓄機構の充実と国の支援を検討すべきだとしている。
そのほかミニマムアクセス米についてのWTO交渉で主張、水田フル活用政策を基本とした政策支援、小規模農家や兼業農家を政策対象に位置づけたうえでの計画生産の徹底への支援なども求めていく。