「農政改革」は骨太方針第2章の成長力の強化の3番目の項目に位置づけられている。
(1)産業としての持続性、(2)食料供給力の強化、(3)農山漁村の活力の3つを再生するため農政改革を進めるとしている。
焦点の水田農業については▽水田農業の構造改革が遅れていること、生産調整の実施者に不公平感があることをふまえ、自給力の向上のための米政策・水田農業のあり方について検討を進める、とのみ記述。
そのうえで▽世界的な食料需給のひっ迫の可能性もふまえ、大豆・麦・米粉・飼料米などの定着・拡大が進むような思い切った生産振興策を検討し、早期に実施に移す、としている。
このように生産調整の見直しについては素案では言及されていない。
◆政府と与党で調整
しかし、9日の経済財政諮問会議後の記者会見で与謝野馨経済財政担当相は、米政策の見直しについては結論を急がないという方針の表れか、との質問に対し「そうではないと思っている」と断言した。
与謝野氏は低い自給率、担い手の高齢化と後継者不足、耕作放棄地の増大などを挙げ、「農業の将来を憂える方は政府、与党にたくさんいる。改革を進めるということが大前提であって、生産調整については書いてないが、時間をかければ石破大臣と与党は同一方向にまとまると確信している」と述べ、最終的な骨太方針には選択制など生産調整を見直すことを盛り込むことも視野にあるとの認識を示した。
一方、10日、自民党は骨太素案をもとに政務調査会全体会合で議論を始めた。
その席で西川公也農業基本政策委員会委員長は素案が、大豆・麦・米粉・飼料米の定着・拡大が進むような生産振興策、とうたったことについて「現実をふまえたもの。ありがたい」と評価し「われわれの政策は生産調整の堅持。選択制などありえない。水田フル活用をやっていくということ」と政策の抜本的見直しを主張する石破農相を牽制、むしろ素案の文言は、水田フル活用政策定着への足がかりにできるとの考えだ。
とくに21年度補正予算に盛り込まれた米粉・飼料米生産に10aあたり2万5000円の上乗せ措置策(需要即応型水田農業確立推進事業)などを念頭に「一年限りではないという姿勢を打ち出していきたい。継続しなければ改革にはならない」と指摘、22年度は当初予算の段階から水田フル活用のための充実した支援策を盛り込むべきだと主張した。
与党のこうした意見もふまえ16日には「骨太方針原案」が示される見込み。その後、さらに政府・与党間での調整が行われるとみられる。