農政・農協ニュース

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貸出条件緩和で経営改善例増える 農水調査

 返済期間の延長や金利減免など、金融機関の貸出条件を緩和する措置が昨年10月の政府・与党の生活対策で実施されているが、農林水産省は農林中央金庫や信連、JAなどによる農林漁業者への「貸出条件緩和措置」の対応状況をこのほど公表した。この措置によって経営改善が図られた事例が増えている。

nous09062303.gif◆経営改善計画の期間を5年に延長

 農林漁業者を含む中小企業向けの貸出条件緩和措置は、経済情勢の悪化を受けて、昨年10月に政府が決めた生活対策の一環として措置された。
 厳しい経営環境のなか、金融機関が既存の融資について、返済期間の延長や金利減免などを行うことができれば借り手の資金繰りは助かり経営の改善も図ることが可能だ。借り手企業の経営が改善されれば金融機関が抱えるリスクも軽くなる。
 しかし、金融庁の監督指針では、借り手の要望に応じて返済条件を緩和すると、その債権は原則として不良債権に該当することになる。ただ、例外措置もあって、3年後に正常な貸出先になるよう経営改善計画が提出されていれば不良債権としないという規定がある。
 にも関わらず実際には中小企業を対象にした貸出条件緩和の適用は一般的ではなかった。理由は中小企業にとって「3年間での経営改善」は高いハードルだからだ。
 そこで今回の対策では中小企業については
正常貸出先になるまでの経営改善計画の期間を「概ね5年」と延長した。これによって、たとえば「要管理先」とされていた借り手が「その他の要注意先」となるなど金融機関にとってもリスクが軽減する事例が出てくることが期待された。

◆JAの農業経営指導にも期待

 農林水産省もこの対策を受けて昨年11月に系統金融機関向けの監督指針や検査マニュアルを改定した。
 このほど公表したのはこの措置によって貸出条件の緩和がどの程度行われているかを調べたもの。農林中央金庫、県農連(信連)、県漁連については農水省が調査し、JAと漁協は都道府県庁が行った。
 この措置が実施される以前の20年7-9月期に貸出条件緩和を行った債権は247件、102億円だった。今回の調査結果では、その後、同措置が決まった10?12月では320件となり21年1-3月期までで計389件となった。金額も203億円と措置前の昨年7-9月期に対してほぼ倍増していることが分かった(表)。
 このうち63%にあたる128億円が経営改善の見込みがあるとして不良債権にならなかったという結果になっている。件数にして148件、38%となっている。
 貸出条件の緩和措置は既存の貸し付け先が対象で、条件緩和の申し出であって対応することになる。経営改善計画の立案が3年から5年に延長されたことで、農業経営者なども計画策定がしやすくなり、一方でJAなど金融機関にとっても不良債権扱いにせずにリスクの低い債権扱いとすることができるため双方にとってメリットがある。
 「貸出条件の緩和措置をしても経営改善が見込まれ不良債権扱いにしないですむケースが出てきた。この措置が浸透しつつあると思う」という(農林水産省経営局金融調整課)。
 JAにとっては農業経営の改善のためのバックアップ体制づくりが求めれているが「農業者とふだんからリレーションシップをもって経営改善指導をしていれば、今回の措置を活用して有効な改善計画を立案し、同時にリスク債権しなくても済む。農業者にとってもJAの信用事業にとってもメリットのある措置」と理解と活用を求めている。

(2009.06.23)