冨士専務は当面の課題として、まず農政問題では、「来年3月に閣議決定される基本計画とWTOがある。二つ目に3年に1度のJA全国大会を成功させ、それを実践していくこと」をあげた。そして三つ目の課題として、現在、審議会で検討してもらっている中央会のあり方、組織体制の整備をあげた。
農政については、今年は3年に1度の全国大会と5年ごとに見直される基本計画が重なった年だが、農業政策に関するJAグループの考えは基本計画に反映させていく。そして自ら取り組む課題については大会議案に盛り込み実践をしていくとした。
全国大会の取り組みとしては、「農業所得の増大」を第一の課題として提起しており、JAグループ自らが生産資材を安く提供するとともに、販売戦略を組み立てて農家の所得をあげていくことだとした。そして「現在は川下からの支配が強まっており、集荷力だけで販売をしていくのは容易ではない」ので、関連企業や流通に資本参入することでその企業と連携し、適正な販売価格を実現することや系統共販のあり方についても大会議案で提起されており、議論し実践していくことが大事だと語った。
また、改正農地法については、7月の全中理事会で方針を決めるが、JAが地権者と担い手の仲介役を果たし、担い手には農業・生産資材・販売への支援をすると同時に、土地を貸し出し農業との関係が薄くなる地権者に対しても信用・共済・厚生などのJA事業の利用をできるようにするなど「地域の暮らしのサポートをきちんとJAの事業に反映させていきたい」。農地問題は重要であり、今後のJAの事業展開の上でも戦略的に取り組んでいくと語った。
WTO問題については、先日、茂木会長らと訪米し関係団体や政府高官と意見交換・情報交換したが、オバマ政権は当面は内政重視で貿易問題の優先順位は低いと感じたという。ただ、「2010年中には決めたいというスケジュール感がでてきたので、気を緩めることなく手を打っていく」とした。
また、「農業分野でいえば7?8割は出来上がっている。あと2割だといわれるが、その2割が各国にとって重い」。今後の交渉としていままで積み上げてきた7?8割をもとにまとめていくのか、それとも環境や労働、さらに世界の穀物事情など新しい事態に対処する新しい価値観、新しい枠組みを入れ込むのかどうかが、秋以降の各国の動きで決まる「岐路にある」とし、JAグループとしては「新しい価値観、新しい枠組みを入れ込むべきだと考えており、そう進むようにがんばっていく」と語った。
【経歴】
昭和28年6月18日生まれ
中央大学法学部卒
昭和52年4月 全国農業協同組合中央会入会、
平成5年7月 同農政部畜産園芸課長、6年2月 同米麦課長、10年8月 同農業基本対策部長、15年12月 同農政部長、
17年8月 同基本農政部長、18年8月 同常務理事就任、21年6月 同専務理事就任