農政・農協ニュース

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「総合JAの意義」で熱い議論  新世紀JA研究会第6回セミナー

 新世紀JA研究会は7月7日〜8日にかけて、ニューオータニ神戸ハーバーランド(兵庫県神戸市)で第6回セミナーを開いた。

◆「農業の行く末を誤らないために」


萬代宣雄代表(JAいずも組合長) 今セミナーのテーマは「総合JAの今日的意義を考える」。開催地となったJA兵庫六甲の取り組み発表から、今秋の第25回JA全国大会議案の検討まで、多彩な意見交換がなされた。
 萬代宣雄代表(JAいずも代表理事組合長)は「農業は非常に不安定な状況が続いているが、行く末、方向性を誤らないように力強い意見を出し合っていきたい」とあいさつ。
 JA兵庫六甲の中尾重保組合長は「農村部と都市部を包括するJAとして、農業と地域振興に根ざした活動をしてきた。今セミナーを経営改善や問題解決につなげたい」と期待を述べた。


(写真)
萬代宣雄代表(JAいずも組合長)


◆JAの総合性を総合力へと変えるために


 基調講演では福井県立大学の北川太一教授が第25回JA全国大会議案を踏まえて、「JAが総合力を発揮するためには、初期の協同組合の理念に基いて活動と事業を一体化しなければならない。食と農に関心のある地域住民を取り込み、双方向的で広がりのあるJA組織をめざすべき」などと述べた。
 総合JA研究会主宰の福間莞爾氏は「先端を行くビジネスモデル」をテーマに講演。「総合農協が企業的大規模農家の育成を阻んでいるなどの批判もあるが、JAが総合農協でなければ農業振興や地域振興はできない。他の組織がマネできない独自の運営方式で総合JAのビジネスモデルを形成すべきだ」と話した。
 またJA兵庫六甲が、事業の総合性を発揮するために各支店に「くらしの相談員」を配置するなどの取り組みを紹介。
 会場からは「事業別の組織運営に対して利用者の反応はどうなのか」「准組合員の位置づけはどうするべきか」など活発な意見交換が出た。


◆対外的発信力の強化など、大会アピールを採択


  2日めの8日はJA兵庫六甲が事例発表を行った。
 地産地消を軸とした農業振興について吉田康弘常務が報告した。同JAは管内に大消費を持つという条件を生かし、都市農業の活路を見出している。専門性の高い62人の営農相談員を育成、配置し、大型直売所を中心とする販売は、毎年右肩上がりに伸びている。
 また、兵庫県青壮年部協議会の大西雅彦委員長が、都市近郊農業における青壮年部活動について報告した。農業体験や直売イベントなどを通じて食農教育の大切さを指摘し、地域リーダーとしての役割を強調した。
 セミナーでは最後に大会アピールを採択。討議内容に基づき「現場の実情を踏まえた一貫性のある政策の実現」「多様な担い手農家の将来像の明確化」「対外的なアピール・発信力を強化」などを訴えた(全文下掲)した。
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(写真)
初日の相互討議の様子(左から)白石正彦東農大名誉教授、北川教授、前田常務(JA兵庫六甲)、福間氏
会場からも多くの質問や意見が出された

【新世紀JA研究会】
 JA運営の問題解決、全国連や行政への要請活動のためにはJAの組合長や役職員が自由に情報・意見交換する場が必要だと、06年10月に設立。年2回のセミナーを開き、現在の参加JAは全国から50ほど。 

大会アピール

1.アメリカの金融危機に端を発する世界同時不況の発生、地球温暖化、エネルギー問題が顕在化する中、今秋には第25回JA全国大会が開催され、「大転換期における新たな協同の創造」の決議をめざしている。われわれは、グローバル経済の進展と地域間格差の拡大のもとで、協同組合運動の意義を再認識し、その力強い推進をはかる。推進にあたっては、遊休農地の活用を含む農地利用、人、技術、経営力を生かした多様な担い手農家の将来像の明確化など具体的な課題を明らかにしていく。

2.国際的な資源需給の逼迫のもと、有畜農業やWCS(ホールクロップ・サイレージ)の推進などによる食料自給率の向上は国民的課題である。われわれは、農業の復権のもと、家族農業経営および集落営農・農業生産法人の支援など生産への参加を含む多様な農業の経営主体の育成をはかる。また、行政に対しては、予算・政策の継続性・一貫性を保持し、かつ、生産現場を直視した現実性のある、農業所得の確保を第一義とした安心して営農に従事できる施策の確立を要請していく。

3.JA経営は、デフレ・不況の経済状況のもと、事業伸長が望めず、また、農業振興のための信用・共済事業の収益依存が困難な厳しい状況の下にある。このような状況の中で引き続きトータルコストの削減など経営改革を進め、総合JA・協同組合として特性・優位性を発揮した事業展開をはかる。

4.組合員の加入対策については、一戸複数正組合員化(青年・女性の加入)・新規農業参入者などをはじめ、准組合員に対しては、事業利用はもちろんのこと、体験農園などの食農教育を通じた地産地消の協同活動への参加を勧めてその推進をはかる。

5.協同活動強化と経営刷新を進めるため、組合員参加の事業運営と徹底した役職員の意識の改革をはかる。このため、協同会社・病院施設などを含めたJAグループ全体の一体感を醸成する組合員・役職員教育および広報活動を強化する。

6.JAグループの農業振興への貢献努力に対する国民的理解を得るため、組織内対策のみでなく対外的なアピール・発信力を強化する。

7.以上の他、第1回セミナー以来の申し合わせ・アピール内容を含めて、その実現をはかる。 

以上、第6回セミナー(JA兵庫六甲)における大会アピールとする。

平成21年7月8日 新世紀JA研究会

(2009.07.14)