有識者らでつくる同省の「農業分野における情報科学の活用研究会」が、このシステムを核に農業技術体系を確立、それを経営面にも適用できるようにして、世界でも珍しい農業の姿を目指すという報告書をまとめた。
定年退職者や企業など農業への新規参入者が、普及指導員や営農指導員の指導に加えて篤農家の経験とノウハウなどを利用できるようにすれば参入時の失敗もなくなるだろうと報告書は期待した。
現状は熟練技術を持つ篤農家の多くが高齢者である一方、後継者不足も深刻だ。優れた技術の伝承が急務となっている。
その中で匠の技を文字情報でマニュアル化することには限界があることも明らかになってきた。マニュアル通りの農作業をしたのに結果は篤農家との間に差が付くのだ。
このため報告書は大規模なデータをコンピュータで解析し、新たな知見を得るというデータマイニング技術などを用いる方向をとりまとめた。
例えば将棋ソフトでは過去の膨大な棋譜を蓄積し、現在の局面と比較、解析することにより、理屈はわからなくても名人に匹敵する成果を得ることができる技術がデータマイニングだ。
また多数の農業者が様々な条件(作物の状態や栽培環境など)下で行った農作業と、その結果の関係を生データの形で蓄積することが可能になっている。
さらに、この技術で解析することにより、因果関係を論理的に説明できなくても、結果として最適な行動を選択できるようになってきている。
報告書は、こうして適時にアドバイスする意志決定支援システムを中核に据えた農業生産技術体系の確立を目指すとし、同省は来年度にシステム開発にかかる方向だ。