農政・農協ニュース

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「惰性からの転換」の一年 石破農相退任会見

 石破農林水産大臣は9月16日午前、退任会見を行った。この1年を振り返って「惰性からの転換だったのではにいか」と述べ、農水省改革、生産調整政策の見直しなど今後も野党の立場から農政に関わっていく意欲を示した。また、自民党の総裁選挙には「出馬はいたしません」と表明した。

石破農相退任会見 就任した昨年9月は事故米問題の渦中。「被害に遭われた方、食品企業などに省を上げて誠心誠意対応してきたと思う。改めて国民に深くお詫びしたい」と述べ、ヤミ専従問題も含めて農林水産省改革は「新政権のもとでさらに議論されるだろうが、国民から親切、正直、丁寧な組織であると認識される努力をしていかなければならない。省改革は半ばだが、もとに戻ることはないという不可逆性は担保できた」などと語った。
 WTO農業交渉については「国内、海外ともに持続性のある農業、多様な農業がきちんと確保され、国内においては生産者だけでなく消費者の利益がともに満たされるような仕組みに変えていかなければならない」と述べほか、「国際交渉では(日本の主張に)賛同する国を増やしていかなければならない。日本だけが言っている、という交渉であってはならない」などと話した。
 また、自給率とともに自給力を向上させていかなければならないとして、そのために「人、金、モノ(農地)を持続可能にしなければならない」と農政改革議論で提唱したことについて「(自給力向上議論への)道筋は示したつもり」と語った。

◇改革への意欲

 減反政策の見直しを含め6大臣会合での議論を進めるなど、この一年の農政について改めて問われると「言葉はきついかもしれないが、惰性からの転換だったと思う。今までこうだったからこれからもこうだ、ということが(これまで)あったのではないか。あるいはパッチワーク的、あるいは増築に増築を重ねるという、従来の方針を基本的に変えることなく、その時の状況に応じてということではなかったか。それからの転換だった」などと述べた。
 15日に大臣名で公表したシミュレーションをもとにした米政策改革の方向についても「現場には閉塞感、不公平感が横溢している。生産額が減り農地が減り、担い手が育っていないのは歴然とした事実。生産調整は農政の根幹で大臣就任前から問題がないとは思っていない」とし「(今回の)公表には特別な思いがあった」という。
 
◇党内議論に注文

 会見では「自由民主党の総裁選挙には出馬いたしません。党再生のために一致してやっていける体制をつくるべきと判断した」と表明、谷垣禎一前政務調査会長を支援していく姿勢を示した。
 同時に野党になっても「どんな立場であれ農政にかかわっていかなければと思っている」としながらも、党内での農政議論ついて「自分の意見を言うときは可能な限り現場の意見を反映するとともに、識者が何を言っているか、すべてみたうえでなければ発言すべきではないと思っている。(自分も)すべてみたわけでないし、まして外国(の議論)はほとんど知らないが、それをきちんとふまええたうえで発言をしなければ農政を変えることにはならない」などと注文をつけた。
 また、農業団体に対しても「誰のための農政ですか、農業がなくなったら何が団体ですか、ということ。衰退する農業への危機意識共有は団体とも進んだ」として、自民党、農水省、農業団体のトライアングルで農政が進められてきたとの指摘に対しては「トライアングルは変質するししなければならない」と語った。また民主党農政について「どう農業を発展させていくかは自民党であれ民主党であれ党の利益を大きく超えるもの。民主党が党の利益を考えるようであれば全力で闘う」と語った。

(2009.09.16)