農政・農協ニュース

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第25回JA全国大会議案決定

「農業の復権」、「地域の再生」、「経営の変革」の3本柱を明記

 JA全中は「大転換期における新たな協同の創造」をテーマに掲げた第25回JA全国大会議案を9月の理事会で決めた。大会議案は「農業の復権」、「地域の再生」、「経営の変革」の3本柱でJAグループの今後の方向性を提起。7月末までに行った組織協議では1000を超す意見があり、議案の修正が行われた。10月7〜8日の全国大会で決議する。ここでは修正部分を中心に紹介する。

◆地域農業戦略の策定・見直し

 大会議案は、JAを取り巻く環境認識と新たな協同の創造をテーマに掲げた第1部「環境認識と主題」、農業復権、地域再生、経営変革の3本柱の具体策を示した第2部「新たな協同の創造のための取り組み」、そして第3部「大会決議の実践と進捗管理」で構成されている。
 環境認識では、世界的な金融危機に端を発した景気後退を受け、「米国型の市場原理主義への過度な偏重を見直す動きが強まってきており、協同組合理念にもとづく事業・活動が再評価される環境が醸成されつつある」ことを打ち出した。
 組織協議では、こうした環境認識は共有できるとの意見が多くを占めた。また、激変する環境のなか、JAの存在意義を組合員と地域住民に再認識してもらうことが大切になるとの指摘もあった。
 この環境認識のもと、取り組むテーマとして掲げたのが「新たな協同の創造」。農業者の協同を基本に、他の協同組合、消費者、企業、行政など多様なネットワークづくりを通じて、農業復権と地域再生を図ろうというのが狙いだ。
 これについても賛同が得られたが、なかには「企業との連携など『協同』の概念が広すぎる」との意見もあった。

◇   ◇

 農業の復権については、「農業生産額と農業所得を増大し、農業・農村の元気を取り戻します」を第一の柱に掲げるよう構成を修正した。また、具体策を示す必要があることや「政策支援も必要」との意見があったことをふまえ、議案に「地域農業を戦略の策定・実践」を新たに提起、政策対応では「基本計画」に自らの取り組みを反映させる働きかけを行う、とした。
 また、JAの販売戦略について組織協議では「ファーマーズマーケットは取り組みを強化すべき」のほか「インターネット販売を強化していくべき」との意見もあった。
 改正農地法への対応のうち、農地の利用集積については「JAが積極的に関わっていくべき」との意見が太宗を占めたが、「農業会議所や行政の連携が不可欠」との指摘も多数あった。
 JAの農業経営をめぐっては「組合員が農業を継続していくことが重要」、「収支確保が困難であり慎重に取り組むべき」との意見と「地域農業の維持のために取り組むべき」との両論に分かれた。議案ではJAの農業経営についての原則を提示する(別掲)。
 そのほか、組織協議では「JA批判にしっかり対応していくべき」、「JAのイメージアップに取り組むべき」との意見が多数あったことを受け、広報体制の強化も盛り込んだ。


◆くらしの活動はJAで自律的に推進

 地域再生の具体策の柱は「生活の総合的支援」と「JAくらしの活動」だ。
 JAくらしの活動は食農教育、市民農園、高齢者生活支援、子育て支援など、組合員・地域住民の願いやニーズに応えるもの。その意義と重要性についてはおおむね賛同されたが、「経営状態によってはくらしの活動に取り組めない」といった意見もあった。そのため大会議案では、一律的な取り組みではなく、「JAで自律的に推進する」として、地域に応じた活動推進を提起している。


◆県域での効率運営

 JA経営の変革では、今回、効率化が可能な部分について「JAの枠を超えた効率的な事業運営の仕組みを確立する」として、JA・中央会・連合会トータルでの効率化、合理化を徹底することを提起している。ここでは、JA単位では今後、限界が想定される事務処理などの県域運営などを想定している。
 組織協議では、この方針について、理解を示す意見が多かったが、「全国一律的な管理は困難」、「県域効率化策のメニューが見あたらない」などの意見があったが、中央会・連合会がJAの経営計画策定・実践を支援する方向は賛同を得た。
 議案では、JAの経営計画策定を支援するため▽中央会・連合会は従来以上に連携を強化、JAと協議、▽事業ごとの事業伸張、組合員基盤拡充策、効率化具体策をまとめる「県域実践プラン」をつくるとする。
 そのうえで、JAは県域実践プランを反映したJAの経営戦略・経営計画を策定する、としており、このJAの経営計画と県域実践プランの総体を「県域戦略」と位置づけて実践する方針を打ち出している。
 ただし、県域実践プランの策定には、取り組むJAと取り組まないJAが混在すると、県内のグループ運営にダブルスタンダードが生じて、予期せぬコストアップになりかねないため、議案修正でこのことを明記、原則としてすべてのJAが参加する協議を行うこととした。

◇   ◇

 全国大会を受けた重点実施事項は地域農業戦略と農地利用長期ビジョンの策定・実践、くらしの活動活性化、農とくらしの取り組みを通じた組織基盤の拡充。これらをJAは「成長戦略」として位置づけ、県域実践プランをふまえて経営計画を具体化していくことを提起している。

 

〈JAの農業経営にかかわる実施・運営原則(案)(平成21年10月)〉

 地域農業の振興は農家組合員が行うことが基本であるが、担い手が不足する地域においては、JA内部や地域での合意を前提  に、JA出資型農業生産法人やJA本体により、JAが農業経営を行うものとする。  
                            
〈運営原則〉                                                                       
[1] 地域の他の担い手との連携をはかる。                                                   
[2] 地権者の農地保全(農業的利用)についての責任を明確にするとともに、地域ぐるみで農地の保全についての合意形成をは かる。                                                                          
[3] 地権者とオペレーター、JA(「JA出資型農業生産法人」を含む)との間で、農作業や収益・リスクの分担関係について明確に  する。                                                                          
[4] 運営にあたっては、事業継続に必要な利益の確保を原則とし、運営開始当初に赤字が見込まれる場合は期間と許容される  金額を明確化する。なお、JA本体による経営の場合は区分経理を明確に行う。                              

(注)上記の運営原則の[2][3]については土地利用型農業に適用する。
 また、ここでのJA出資型農業生産法人とは、JA出資割合が50%以上としてJAが実質的に経営を支配する法人である。

(2009.09.18)