(写真)農学会のさらなる発展が期待されている
◆輸入依存に危機感を
増加の一途をたどる世界の人口。シンポジウムの冒頭、鈴木会長は「食料の安定供給と安全確保は人類生存の最重要課題だ」と語った。
今日の食料問題については「人口の増加のみならず、新興国の経済発展、南北格差の拡大、地球規模の気象異変などによって、より複雑化・深刻化している」と指摘。食料問題の解決は「農学に課された最大の使命」とし、総合的な農学の重要性を強調した。
シンポジウムでは9人の報告があった。
日本大学生物資源科学部の大賀圭治氏は「世界の食糧事情と日本農業の進路」をテーマに講演し、「21世紀に入って食料と燃料が競合し、両者の価格が連動して変化する時代が到来した。穀物、油糧種子、砂糖という基本食糧を圧倒的に輸入に頼っているわが国は、この地殻変動の影響を深刻な形で受けることになる」と分析。
「わが国は輸入に依存した食料供給構造を国際穀物需給構造の変化に、どう適応させるかという大きな課題に取り組むべきだ」と指摘した。
(写真)祝辞を述べる生源寺眞一氏
◆作物科学の統合
農業・食品産業技術総合研究機構(作物研究所)の岩永勝氏は「食料危機を克服する作物育種」で講演し「統合的な作物科学」の重要性を訴えた。
「還元主義的な分析中心のアプローチだけでは世界の農業問題に立ち向かえない。分子、細胞、個体、作物種、生産体系、農体系、農食連携、地球環境に至るまでのあらゆるレベルでの統合的な視野が必要だ」と強調した。
日本植物防疫協会の上路雅子氏は「食料の安定供給と安全確保をめざす農薬利用技術」をテーマに講演。
「過去に使用された農薬のさまざまなリスクを軽減するためには、農薬有効成分の開発方向には低投入型、高選択性、易分解性、低毒性などが目標だ。さらに新規・既存農薬の双方に有効な取り組みとしては、農薬製剤と施用技術の改良があり、安全性や利便性などを付加した製剤や利用技術の開発をめざすことで、安定的な食料生産に貢献できる」とした。
(写真)講演する大賀圭治氏