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 生産者との課題共有化に期待 「担い手」や「価格」などを議論 日本生協連が食料・農業でシンポジウム

 事業構造の改革を検討している日本生協連は食料・農業問題にどう関わっていくかの課題を明確にしようと11月4日、都内でシンポジウムを開いた。

日本生協連の食料・農業問題シンポジウム(写真)日本生協連の食料・農業問題シンポジウム=東京・八重洲富士屋ホテル

 パネリストは農協役員や外食チェーンの社長ら5氏。それぞれ産直活動などを報告し農業の担い手農産物価格有機農業などに焦点を当てた。
 山間地でユズを作っている農業法人が、生の出荷だけなら3000万円ほどにしかならないユズを加工品にして事業規模を1億円ほどに拡大し、雇用を創出したという特徴的なパネリスト報告もあった。
 和歌山県の「古座川ゆず平井の里」という法人で、都会から帰郷した若い女性がここで働くようになって結婚したので、その限界集落に10年ぶりに赤ちゃんが生まれ、地域活性化にもつながったとのことだ。
 ユズの加工場は廃校になった学校の運動場に建てたという。
 報告者は紀ノ川農協の宇田組合長。同農協は農民組合がつくった系統外の組織だ。
 これらの報告に先立ち東京大学・院農学生命科学研究科の中嶋康博準教授は解題で「今後、日本では人口減少で市場が縮小し、また食料消費も減少する。ビジネスにとっても大問題だ」と指摘し、消費拡大の戦略が重要と提起した。
 パネルディスカッションでは担い手問題についてJAと生協の産直はコメ、野菜、肉などの複数取引が理想だ。そうすれば商品開発も増え、担い手も大きく育つ昔はコメの単品取引でもよかったが、米価が下がった今では単品は好ましくない新規就農者を雇用して育てるために農家は経営と家計を分けて法人化することを考える必要がある、などの議論があった。
 価格と生産コストの問題では産地間競争でなく、産地間リレーでうまくつなげれば有利になるJAのインフラをもっと活用すればよい産直は共計と違って、わずかながらも流通コストを下げることができる▽品目によっては、まとまった取引でコスト下げが可能になる、などの発言が出た。
 有機農業については有機農産物の市場は広がっているが、値段が高くてはダメ。やはり限られた価格帯の中で取り組んでいくことが大事だ、などの議論があった。
 生協への期待や注文では生産現場と課題を共有化していきたい自給率とは何かをもっと深く考えたい麦や大豆にも目を向けてほしい、などが出た。
 シンポにはJAグループなどから約150人が参加した。
 日本生協連はシンポなどでの議論をさらに検討した結果を理事会に答申して年明けに指針をつくる。

 

【パネリスト報告】 (要約)


「産直33年・新たな産直目指して」
宇田篤弘組合長
(和歌山・紀ノ川農協)


 私どもは販売・購買事業だけを行う系統外の専門農協で生協との産直事業が中心だ。
 取扱品目の56%はミカン、カキなどの果物でGAPの生産工程管理を導入。光センサーで選果している。有機JASと特別栽培の公的認証取得実績も誇っている。
 新規就農者は農家がいったん雇用して育成することを重点にし、いま約10人が雇用期間を終えて自立してきている。そのために農家の法人化を進めた。
 限界集落でユズを作り、加工もしている法人の雇用はほとんどが女性で、都会から帰郷した女性が地元で結婚したため10年ぶりに、その集落に赤ちゃんが生まれたという山間地活性化の話もある。

 

「田尻地域の取り組みについて」
伊藤成公・田尻営農センター長
(宮城・みどりの農協)


 担い手確保を地域の人々と話合ってきた。担い手はいろいろ。経済的にも兼業農家は必要だ。また複合経営農家をどう支えるかも大きなテーマになっている。集落営農組合に入っている複合経営農家にギブアップされると次のことなど考えられなくなる。そこで複合経営の養豚農家を中心に飼料用米の生産に努めたりしている。
 複合の中でも園芸農家は産直市場などに出荷して元気がよい。
 水田基盤の整備を土台に集落営農組合をつくり、これによって20?30代の後継者が育ちつつある。区画整備で規模拡大が可能になったからだ。もうからない状況にあっても利益を見出していくことが大事だと思う。


「ワタミファーム・農業への取り組み」
竹内智社長
((株)ワタミファーム)


 ワタミは社員教育の観点から農業を始め、今では全国に農場がある。よくセミナーなどの講師に招かれて「農業は企業でやるのは危険だ。法人でやるのが得策」といっている。
 ワタミは介護事業もまた高齢者に弁当を届ける宅食事業もやっている。
 地球上で一番たくさんの「ありがとう」を集めるグループになろうというのが目標だ。
 いま力を入れているのは食料残さをたい肥化するリサイクルだ。 農場の作物はJAS有機が中心だ。また有機農家の経営指導も一部でやっている。どんぶり勘定から抜け出せず、このままではダメだ、といっても指導だけで救えるところもあるので指導している。


「食料・食料生産の課題について」
赤松光理事長
(コープネット事業連合)


 飼料用米を食べさせた豚肉の供給を4月から産直で始めた。シェアは今5%だが、3年後には10%を目指す。
 飼料米には国の補助金がつくので何とか採算は合っているが、補助金が減らされたら値上げを迫られる難しい局面が予想される。
 特に豚肉価格が大暴落し、相場との差が大きいが、約束は守らねばならず、今後、組合員が買い支えてくれるか理解が必要となる。 卵でも同じことを始めたが、豚と合わせて供給量が増大すれば関東地方だけでは飼料米が調達できなくなるという問題がある。
 一方、麦と共にパンやうどんも値下がりしたため食用米の需要が低価格米にシフトしている問題もある。

(2009.11.09)