(写真)基調講演を行った平野達男参議院議員
◆農協運営に勇気と自信と誇りを持って
萬代宣雄会長(JAいづも組合長)はあいさつでこれまでの会の活動について「行政や全国連への要請活動(アピール)は、ささやかながらも成果をあげていると感じる。これからも問題提起しながら研鑽を深め、日本農業の発展に力を入れていきたい。農協は地域でがんばっている。勇気と自信と誇りを持って、農協運営と地域や農業を守る活動をしていきたい」と述べた。
来賓の長澤寿一JA岩手県五連会長(JAいわて中央会長)は「民主党が中心となって大きく制度や環境が変わるなか、セミナーが開かれるのは意義深い」、開催地のJAいわて中央から藤尾東泉組合長が「農政は180度変わった。われわれの思うような方向に農政が進んでほしい」とあいさつした。
◆戸別所得補償制度への質問あいつぐ
今セミナーのテーマは「新政権下における農政の展開-集落営農をどう進めるか-」。
11日は岩手県選出の平野達男参議院議員(民主党)と、東北大学の工藤昭彦教授が基調講演を行った。
平野議員は農地制度の改正とその影響、生産者への直接支払い、欧米の食料戦略などを中心に講演した。質疑応答では、戸別所得補償制度への疑問や要望があいつぎ、予定していた15分を大幅に超過して1時間弱も、会場との活発な意見交換がなされた。
代表質問をしたのは萬代会長とJAいわて中央の藤尾東泉組合長。
萬代会長は「なぜ補償水準は家族労働費の8割なのか。そもそも民主党は農家の平均所得をいくらと想定しているのか」などと質問。平野氏は「コメは過剰基調なので、補償が8割に設定されているのだと思う。ただし中小規模家族経営の標準的数値の8割なので、大規模生産者や法人化・集落営農などでコスト削減している場合はむしろ10割を超える。農家の平均所得については、具体的な数字はもっていない」と答えた。さらにWTO交渉や農協の役割についての意見を求められ、「貿易立国の日本として、WTOとFTAは推進しなくてはいけないが、コメ、麦、牛肉などの主要農畜産物は関税引き下げ対象にしない、農業を守るというのが大前提だ。流通が待ったなしで変わってきているので、農協も変わることが必要だが、農協が大事、農協がなければ困るというのはどの地域でも共通見解だろう」と述べた。
藤尾組合長は「戸別所得補償制度をバラ色の政策だと思っている人もいる。早く明確な数字を出してもらわないと、集落営農から離脱する人が増えてしまい、生産現場が混乱する」と意見し、平野氏は「すでに来年の作付計画を立てる時期なので、早く制度を明確にする努力と働きかけをしていきたい」と答えた。
そのほか会場からは、「直接、意見を言えるようなこういうチャンスを待っていた。消費税5%ならばなんとかコメの販売分を支払えるが、10%、15%になるとやっていけない。こういう現状を知ってほしい」、「民主党の先生がたは現場を歩いていないのではないか、もっと現場を学ぶべきだ」などの提言があり、活発な討論がなされた。
(写真)代表質問する萬代宣雄会長
◆「真に組合員の営農・生活向上のために」
大会2日目には、地元の集落営農組織である農事組合法人「ゆいっこの里犬草」の阿部幸良組合長が、エダマメを中心にした園芸作物の取り組みを紹介。30年以上前から米粉の製粉と海外への輸出に取り組んでいる岩手阿部製粉(株)の阿部淳也会長は、国産農産物へのこだわりを話した。
2日間討議された内容を踏まえて「戸別所得補償制度の数値や内容を明確にして組合員の不安を解消していく」「JAグループは家族農業を中心に農地の利用調整に積極的に取り組む」「規模拡大による事業タテ割の弊害を是正し、真に組合員の営農・生活向上のためのJA運営を進める」といった、大会アピールを満場一致で採択した。
セミナー終了後には、女性部のつくった地産地消弁当がふるまわれ、ゆいっこの里犬草や農産物直売所「サンフレッシュ都南」の現地視察を行った。
(写真)
上:「ゆいっこの里犬草」を視察するセミナー参加者
下:女性部のつくった「地産地消弁当」
【新世紀JA研究会】
2006年10月に、JAの組合長や役職員同士のつながりを強化し情報交換の場を設けようと、JAいづもの萬代宣雄組合長を会長、JAえひめ南の林正照組合長を副会長にして設立。会員には全国機関も。年2回のセミナーを開き、時宜にあった研修や政府などへの提言などを定期的に行っている。