農政・農協ニュース

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1%向上にどれだけ増産? 自給率向上の課題を議論  企画部会

 11月12日に開かれた食料・農業・農村政策審議会企画部会では食料自給率を1%向上させるためには品目別にどれだけ増産が必要なのかを農水省が示して議論した。

◆大幅な増産が必要

 食料自給率目標については来年1月に検討する予定だったが、個別の政策課題の議論をする際にふまえておくべき基本問題だとしてカロリーベースで主要品目ごとに自給率を1%上げる試算を提示した。
 主食用米で1%上げるためには、34万tの増産が必要だ。これは一人年間2.5kgの消費増にあたる。このためには現在の単収(530kg)を前提にすると7万haの追加作付けが必要になる。
 米粉で1%上昇させるには主食用と同じく34万tの増産が必要。現在の多収穫米単収(650kg)を前提にすると5万haの作付け増が必要になる。飼料用米では畜産物の自給率を1%上げるための増産量を試算。単収を現在の650kgとすれば、311万tが必要となる。20年では約1万tだから大幅な増産が必要になるが、これに必要な作付け面積は48万haで、これは20年産の米作付け面積の29%になる。


◆流通・消費が課題

 小麦は39万tの増産が必要で20年産作付け面積21万haに9万haの追加が必要になる。大豆は現在の2倍の26万tの増産が必要との試算だ。この5品目で試算どおりに生産・消費されても5%の上昇であり民主党が掲げる10年後50%実現にはまだ届かない。
 また、この5品目だけでも多収穫品種の開発など増産のための課題ももちろんあるが、流通・消費面の課題が大きい。
 米粉であれば独自の特性を発揮する需要の開拓、商品開発が求められるし、飼料用米は産地と配合飼料会社、畜産農家とのマッチングや、ストックポイントの設置など本格的な流通体制の確立が必要だ。
 小麦の作付けを増やすには水田二毛作の拡大と需要拡大策が求められる。当面は外麦のほうが品質評価が高いため、農水省は国産日本麺用小麦をパンに使うことや、菓子などでの利用拡大が必要だとしている。大豆は安定生産・安定取引などがテーマだ。
 企画部会の議論でも国産農産物を「どう使うか、流通・販売が主要課題」とする意見が相次いだ。その際の視点として「食料不足、飢餓人口の増大など、食料自給率の向上は地球規模で考えれば避けられない課題だというメッセージをしっかり国民に出さなければならない」、消費者委員からは「(国産農産物を利用する)行動に結びつくには(食料・農業の)実態を消費者が知らなければならない」との指摘もあった。
 その一方、学識者からは「自給率と食料安保を考えると、完全自給はできないから国民にとってもっとも大事なのは食料安保。自給率50%を達成するにはコストがかかる。そのコストを国民が負担するか、という問いが必要だ」との指摘も出た。

自給率1%向上の試算結果
◆自給率と戸別所得補償制度

 民主党政策の柱は戸別所得補償制度の創設によって食料自給率を向上させることだ。企画部会のでは来年度からのモデル事業への意見も出た。
 茂木JA全中会長は、先頃まとめたJAグループの政策提言に基づき、米戸別所得補償モデル事業は「計画生産のメリット措置」であるとの認識を強調するとともに、麦・大豆などへの支援策は地域が主体的に単価設定などに取り組める仕組みが必要だと述べた。また全国一律単価に加えて地域銘柄別の補償措置の必要性も訴えた。
 他の委員からも、麦・大豆の交付金単価が低いと心配する声が産地に多く「集団的な取り組みが崩壊してしまいかねない」とし、地域の裁量で加算できるようにすべきとの意見があった。
 これらの指摘に対し佐々木政務官は戸別所得補償制度によって「耕作放棄地でもできるだけ生産してもらう」など増産に狙いがあるとして、米粉やそば、さらにナタネなどの生産を重視していることを説明した。また、品目ごとの生産目標について「国として地域に協力をお願いする。今まではそこが弱かった」と国の責任を強調した。
 委員からは「来年度からのモデル事業でどの程度自給率が向上すると想定して5000億円を超える予算要求をしたのか」との質問もあった。自給率を向上させるための政策との位置づけであれば当然の疑問だが、農林水産省からは「今回のモデル事業ではそこまで考えて要求していない」との回答だった。
 モデル事業の詳細は12月はじめには明らかになる見込み。食料自給率は「農政のもっとも基礎となる指標」(佐々木政務官)だけに戸別所得補償制度は新基本計画の検討にとって重要になる。ただし、この日の企画部会でも前回に続いて「審議会の議論はマニフェストに拘束されるものなのか。もっと自由に議論し変えるところは変えて答申すべきでは」との意見があった。

(2009.11.17)