シンポジウムには生物資源学類の学生を中心に1〜4年生約250人が参加した。
日本人の野菜や果物の摂取量が落ち込んでいるが、特に若者の摂取量の低さがめだっている。そこで青果物摂取の大切さを学び、健康や農について考えてほしいと開かれた。昨年に引き続き2回目。
開会のあいさつで金井幸雄学群長は「今『食』のニュースは非常に多く、関心は高まってきているが間違った情報も多い。1人ひとりが食に対する正しい理解とスキルを持つこと、賢い消費者になることが必要だ」と述べた。続いてJA全農の秋田俊毅常務があいさつし、日本の野菜消費量が20年前より20kgも少なく、世界でも低い数値であることを指摘。「いろんな議論をし、正しい知識を身につけてほしい」と希望を述べた。また筑波大学の永木正和名誉教授は「野菜と果物は栄養の宝庫。生物資源学を学ぶにあたって、まず自分との関わりを考えてほしい。日本の食や農の問題を自分の問題として捉え、研究につなげていってほしい」と学生への期待を語った。
シンポジウムの柱となったのは「安全・安心な食生活が健康をもたらす」をテーマにした管理栄養士の木村滋子さんによる特別講義と「野菜・果物とライフスタイルの結びつき」をテーマにしたパネルディスカッション。パネルディスカッションではパネリストとして学生も参加し、活発な意見交換が行われた。
◆「正しい食生活と正しい情報を」
管理栄養士・木村滋子さんの特別講義
講義の中で木村さんは生活習慣病の増加は食生活の変化がもたらしたものであると指摘。メタボが死の危険因子であることなどから話が始まり、正しい食生活の大切さを学生に強調した。
野菜摂取減少の原因は日本人の食生活の多様化にあるとし「野菜や果物こそ現代の食のキーワード。バランスのよい食事を考えてほしい。また、メディアなどで食べ物の効果が多くうたわれているが間違った情報も多い。きちんと見極めることが大事。いろいろな情報に振り回されそうになったときは振り返って見つめなおしてほしい」と話した。
◆学生の食生活からみえる課題
パネルディスカッションは管理栄養士の木村滋子さん、生物資源学類講師の吉田滋樹先生、JA全農園芸農産部の椎名宏行部長、学生代表として同大学4年の仲野翔さん、1年の小松崎愛里さん、三好さやかさんの6人をパネリストに、青果物健康推進協会の近藤卓志事務局長が司会を務めた。
話の中心となったのは、現在の食生活や野菜摂取が伸び悩む理由、その解決策など。
現在畑で野菜づくりをしているという学生代表の仲野さんは、食生活について聞かれ「以前はとにかく量が多く食べられればよかった」と、ボリューム重視の食事だったと話し、三好さんは「ご飯とおかず一品の食事や脂っこい料理が多かった。サプリメントを飲んでいることの安心感があります」と自分の食生活を振り返った。話の中で野菜は好きだがあまり摂取していない学生がめだった。
「なぜ野菜摂取が伸びないのか」について木村さんは塾通いの子どもが増えるなど生活スタイルの変化が一因にあるとし、吉田先生は味覚の変化をあげた。学生側の意見として小松崎さんは「調理が面倒」、三好さんは「サラダ以外の野菜は苦手」と話した。
生産者側からの意見を話したJA全農の椎名部長は「青果物の需要が減少し値段が下がっている。農家の高齢化も問題で日本の農業を支える基盤が脆弱になってきている。生産者理解もみなさんにしてもらいたい」と話した。
青果物の摂取量を増やすアドバイスとして木村さんは「体のことを考えるだけではなかなか難しいので、野菜の旬を楽しむなど興味・関心を持って近づくこと。海外の人のように身近なところに持っていくこと」、吉田先生は「個人的な意識だけでなく、食堂で小鉢をセットにするなど全体の取り組みとして広がればいいのでは」と話した。最後に近藤事務局長は「国産を選ぶことは自らの健康だけでなく日本の農を支えることにも繋がる大きなこと。これを機に食生活を見直していってほしい」とまとめた。
JA全農は去年から全国各地で青果物摂取を呼びかけるためのキャンペーンを学生向けに力を入れており、同日の午前中には都内の小学校で出前授業を行った。また今月末からは東京農業大学で学食を利用したキャンペーンで青果物摂取をPRしていく予定だ。