農政・農協ニュース

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国産ナチュラルチーズの消費拡大を  農水省がワークショップ

 酪農家自ら製造するナチュラルチーズの振興策を検討するワークショップが11月30日、農林水産省で開かれた。
 乳製品を「飲む」から「食べる」へシフトさせ酪農家の経営を支える加工部門として成立させるための技術的な課題や、チーズを日本の食文化のなかに位置づけ消費拡大を図る方策などをめぐって意見が出された。

◆国産チーズの受け皿拡大

あいさつする郡司副大臣 会合では郡司副大臣が「飲むから食べるにシフトすれば酪農も相当変わるのでは。新しい可能性を探り、地域のなかで酪農が成り立っていける議論をお願いしたい」とあいさつした。
 この日のテーマは(1)地域の特性を生かしたチーズの地理的表示のあり方、(2)殺菌基準など製造技術に関わる規制のあり方、(3)チーズ製造技術の普及、指導者養成のあり方の3つ。
 EUには地域原産品について生産、加工、調製などのすべてが特定の地域で行われたことを認証する原産地呼称保護(POD)制度が認証制度として確立されている。チーズでは伊のゴルゴンゾーラや仏のロックフォールがそれだ。ほかにPODよりも緩やかな基準として生産の一工程以上が行われたことを認証するもの(地理的表示保護、PGI)や伝統的な原材料や承認済みの伝統製法を認証するもの(伝統的特産品保護、TSG)などがある。伊のモッツァレラチーズはこれ。
 日本には特別な生産や製造方法についての特定JAS規格はあるが、生産地と結びついているわけではない。一方、地域ブランドづくりを促進しようと制度化された地域団体商標もあるが、こちらは地名と商品の密接な関連などが要件で、品質や原材料についての要件はない。
 こうしたなかでチーズの地理的表示をめぐる議論では、EUのような地理的表示を導入は「時期尚早」との意見がほとんどだった。
 小規模な工房が差別化を図るためのチーズづくりは酪農家が生き残るためには重要だが、現在はむしろ地域内で同水準のチーズづくりできるようレベルアップを図ることと、日本人の食生活のなかに「チーズの受け皿をもっと増やすこと」のほうが課題との指摘が多かった。

(写真)
あいさつする郡司副大臣

◆研修施設、もっと必要

イメージ:蔵王酪農センター(宮城県蔵王町) チーズの製造技術の普及も大きな課題で、現在は技術研修ができるのは(財)蔵王酪農センターのみ。昭和56年からの研修者は累計で約1300人。研修後も自分の工房から技術者に問い合わせが多く、また、JAからの要請で出前研修も行っているという。自分で工房を持つには初期投資に課題があるが、同センターの菅井啓二理事は希望者が増えていることと技術を地域に根づかせるために「全国に3か所の研修施設ができれば」と話した。
 消費者委員からは殺菌など安全性の確保とPRと流通が課題との指摘があった。国産ナチュラルチーズはコンテストも実施されているが「どこで売っているのか分からない」という問題もある。
 また、「フランスでは一人あたりの乳製品摂取のうち8割以上がチーズから。チーズで食べるほうが豊富な栄養を吸収しやすい」(宮嶋望・共働学舎新得農場代表)という乳製品文化がまだまだ理解されていないとの声も。ただ、日本には伝統的な発酵食品が多く欧州のまねではなく「ごはんにフレッシュチーズ、刻みネギ。しょうゆをかければ実にうまい」(弓削忠生(有)弓削牧場代表)など日本食に合わせた独自の普及策が必要との声もあった。
 酪農に限らず農業所得の増大は大きな課題。生産振興、流通改善などへの支援策が期待される。


(イメージ写真)
蔵王酪農センター(宮城県蔵王町)

(2009.12.01)