◆生産者も多数参加
このシンポジウムは、農水省農林水産技術会議事務局と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の主催で開かれた。こうしたシンポジウムの場合「ほとんどが研究者」というのが通常だが、「今日は3分の1以上が生産者や消費者」だと主催者がいうように、会場となった農水省の講堂は400人を超える入場者であふれた。
第2部のパネルディスカッションで座長を務めた山形大学農学部やまがたフィールド科学センターの吉田宣夫教授が「これほど飼料用米が注目されたことはない。今年は飼料米草創元年」と語ったように、飼料用米への生産者・消費者の関心の高さが伝わるシンポジウムだった。
シンポジウムの第1部では、これまでの飼料用米の開発の現状や栽培、飼料用米給与の研究開発の成果が報告された。
パネルディスカッションは、吉田教授が座長となり、研究者・生産者・消費者ら9名がパネラーとなり「飼料用米の利用拡大に向けて」をテーマに行われた。
2部の開催前に山田正彦農水副大臣が登壇し、「水田を活用しての自給率向上のモデル事業を実施」するために飼料用米・米粉米について「思い切って10a8万円」の補償をすることにした。このことで「積極的に飼料用米作りを行い畜産の自給を図っていく」し「これを思い切って推進していく」と語った。
(写真)
山田副大臣
◆利用・販売促進も視野
パネルディスカッションでは、それぞれの立場から現状と今後の方向などが語られたが、飼料用米の生産現場からは、主食用米との関係で作業体系をどう築いていくかが課題だという意見が出された。
また畜産生産者側からは、「飼料用米を給与する体系が日本の畜産で当たり前になるように、技術を普及する必要がある」という意見が出されたが、「畜産生産者には経済的なメリットはほとんどない」という重要な指摘もされた。
豚肉についてみると、通常の豚肉より100g10〜20円高い小売価格で販売されている。それも生協での販売がほとんどだといえる。この価格差が縮まらなければ、生協以外のマーケットに販売が広がることは難しいのではないだろうか。
飼料用米の生産者だけではなく、飼料会社・畜産生産者そして流通・小売まで、経済的な支援を含めた総合的な施策がなされ、「国産の飼料用米で育てられた肉や卵が当たり前」にならなければ、技術的に進んだとしても、飼料用米の利用拡大には限界があるのではないだろうか。