「発刊にあたって」
農薬は、適正に使用しても、それを使ったというだけで農産物の安全性について疑問視されるなど、誤解されることが多い生産資材です。また、環境保全型農業が提唱され、農薬の使用量を減らすことが食の安全と環境への負荷を軽減するために必要だともいわれています。しかし、自給率を高め、国民に安全で安心な食料を安定的に供給する日本の農業生産にとって農薬は必要不可欠な生産資材であることは間違いありません。そこで、改めて食の安全性とは何か。農薬とは何かについて考えてみるために、シリーズ「農薬の安全性を考える」を企画し、「農業協同組合新聞」とホームページ「JAcom」上で、2007年9月から2009年7月にかけて15回にわたって掲載しました。
この冊子はその連載を収録したものですが、収録に当たって、第1部「問題提起」、第2部「安全性の検証」、第3部「まとめ」に構成を変更するとともに、一部修正を加えました。
第1部では、まず梶井功東京農工大学名誉教授と本山直樹東京農大客員教授(当時、千葉大教授)に、「化学農薬の食料生産に果たす役割」と題して、食の安全と農薬の役割、環境保全型とは何か、世界の食料問題・日本の食料自給率と農薬の必要性などを話し合っていただき、農薬の安全性をめぐる諸問題を提起していただきました。
そして科学ライターの松永和紀さんには、消費者に農薬について科学的に理解してもらうためには何をしなければいけないかを話していただきました。
第2部では、第1部で提起された諸課題について、一つずつ検証をしました。検証にあたっては、農薬メーカーなどの方がデータを持っていると考えられる場合でも、あえて研究機関や研究者に取材をし、できる限り客観的な観点から検証するように努めました。
第3部では、検証してきた結果を総括的にまとめると同時に、本当に食の安全性と安定的な食の供給を考えるならば、農薬について感情的な議論ではなく、科学的なデータに基づいて議論をする必要があること。生産者は自信をもって農薬を適正に使用し、そのことをキチンと消費者に伝えていくことが大事だということを、この企画の結びとして提起しました。
全体を読み通す時間がない方は、まず、第3部から読み始め、関心がある第2部の項目をお読みいただいてもよいと思います。
なお、一部最新データと差し替えた部分はありますが、取材にご協力をいただいた方々の肩書き等は、当時のままとさせていただきました。
約2年にわたる取材にあたって、農薬については素人である記者に、忙しいさなかの貴重な時間を割いて、懇切丁寧に分かりやすく説明してくださった方々に、改めて心からお礼を申し上げると同時に、この方々のご尽力のおかげでこの冊子にまとめることができたことを感謝いたします。
B5サイズ 全68ページ
価格・1000円(税込み・送料別)
お問い合わせ・お申し込みは、社団法人農協協会「農薬の安全性を考える」係まで。住所、氏名、電話番号、注文冊数をご記入の上、下記にご連絡ください。折り返し、お支払いのご案内をお送りいたします。
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