◆米価下落の懸念も
取り組み方向基本方針では、戸別所得補償制度モデル事業は、生産数量目標に即した生産を行う計画生産参加者へのメリット強化策と受け止められる一方、麦・大豆・新規需要米など転作支援策では、計画生産の達成を要件としないなど、主食用米の計画生産の位置づけが変化し、モデル事業への参加状況や作柄によっては需給緩和と米価下落が懸念されると情勢を指摘した。
ただしこうした状況変化のなかでも、生産現場に根ざした組織として、組合員の営農の安定と地域農業の維持・発展のため「改めてJA地域農業戦略の再構築を行い」、▽生産者の所得増大をめざした計画生産の徹底、▽担い手づくり、▽地域作物の振興などの取り組みがJAグループにとって必要になっていると提起した。
これは第25回JA全国大会での決議の実践でもあるとして、新たな制度に対する十分な理解と集落・地域単位での制度の活用推進を強調している。
とくにJAの地域農業戦略の見直し・策定にあたっては、新制度をふまえると同時に、これまで進めてきた地域農業振興の取り組みを引き続き推進していくことを基本とする。そのうえで作物戦略、担い手戦略、農地戦略、販売戦略といった戦略ごとに検証と見直しを進める。
◆計画生産の徹底を
また、米の生産数量目標の配分は、需給調整参加者が「納得感」をもって取り組める配分ルールとするなど行政の責任で調整・決定することを求めていく。一方でJAは生産者の不安の払拭と負担軽減の観点から、市町村・地域水田協議会内の関係団体と十分な連携と協議を行い、「地域実態にあった役割分担と体制構築」を進めることを基本方針とした。
具体的な水田農業対策としては、とくにこれまで転作が困難であった地域では、加工用米・飼料用米・米粉用米の振興をはかり、JAグループ一体で流通・販売対策を強化し生産者を支援する方針だ。また、米・麦・大豆などの生産を担う集落営農・担い手づくりを「目標設定」のもとに取り組むことも強調した。同時に、新規需要米や地域作物の生産では団地化・面的集積などの集団的取り組みをJAが徹底して推進することも課題に掲げている。
今後は、JAグループ各段階で「取り組み方針」を策定し関係機関と連携した推進体制を整備する。一方、全中は23年産以降の本格実施に向けたモデル事業の検証を行うとともに、JAグループの政策提案についても協議していく方針だ。