■心停止、年5万件
心臓発作や麻痺の発生件数は年間で約5万件。交通事故死は約5000人だから10倍も多いことになる。
一般に心停止といわれる状態とは、血液を送り出す心室がポンプのよう力強く拍動せず、痙攣を起こしてしまっている状態で、心室細動といわれる。
自動体外除細動器は電気ショックによってこの痙攣状態を取り除くもの。これだけで必ずしも正常な拍動が戻るわけではないが、この処置と合わせ救急車が到着するまで胸骨圧迫や人工呼吸などの心肺蘇生を続ければ、一命を取り留めることにもつながる。
■協力者をつくる
目の前で人が倒れていたらどうするか?。講習会で教えられた流れを整理してみよう。
(1)「大丈夫ですか?」と両手で鎖骨を叩きながら声をかける。最初は小さく、次第に声のトーンを上げて意識を確認。鎖骨を叩くのはもっとも敏感な部分だから。
(2)呼吸の有無を「見て、聞いて、感じて」で確認。「見て」は胸の上下、「聞いて」は口に耳を近づけて、「感じて」は頬に息がかかるかどうか。
(3)呼吸をしていない、となったら周囲に協力を求める。「あなたは119番に電話を」「そこのあなたはAEDを持ってきて下さい」と具体的に指示する。多くの人はあまりかかわりたくはない…と思うもの。だから、具体的な指示で人を巻き込む。
(4)胸骨圧迫を始める。位置は乳首のラインの中央。両手を組んで手首に近い親指の付け根部分で強く押す。早さは1分間に100回のペースで。30回繰り返す。回数は声に出して数える。
(5)次に人工呼吸。片手で額を押し下げ、もう一方で顎をぐっと上げて気道を確保。「鼻をつまんで」で息を吹き込む。
息を吹き込むには、漏れないように口全体を覆う。1秒かけてゆっくりと2回。胸が上がるかどうかを見ながら。急ぐと嘔吐の可能性があるという。
(6)再び胸骨圧迫。そして人工呼吸。
■AEDが音声で指示
かつては心臓マッサージといわれていた胸骨圧迫は脳への血流を維持し酸素欠乏になるのを防ぐ目的もある。 AEDが運ばれてきてからは以下のように対応する。
(7)AEDの多くは電源ボタンはない。蓋を開くと自動的に起動し、音声ガイダンスが始まるからそれに従う。
(8)まず「パッドの装着」の指示がある。上半身の衣服を脱がせ装着。パッドの位置は「左胸と右脇腹」か「右胸と左脇腹」。左右をクロスさせればよく心臓のある左胸に片方を着ける必要はない。
(9)電気ショックが必要かどうかAEDが自動解析を始める。電気ショックを行う場合、周囲から人を離すように音声指示がある。それに従って人を遠ざけたあと、点滅するボタンを押す。
(10)胸骨圧迫と人工呼吸を始めるよう指示が出る。パッドを装着したままで継続する。
AEDは2分後に電気ショックが必要かどうか再び解析をする。除細動がなされていれば電気ショックのための充電を開始しないから誤作動はない。
地域にもよるが救急車が到着するのは平均で6分といわれる。周囲への協力呼びかけがまずは重要だと体験して感じた。
(株)コープサービスでは、JAでも心肺蘇生やAEDの使い方の講習会を実施している。迅速な対応を知っておくことは地域への貢献でもある。